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文化財危機管理 見直しを 千曲・松田館の火災受け

松田館の焼け跡から回収した史料を広げ、乾かす作業を進めた職員ら=8日、千曲市教委歴史文化財センター松田館の焼け跡から回収した史料を広げ、乾かす作業を進めた職員ら=8日、千曲市教委歴史文化財センター
 千曲市八幡の武水別(たけみずわけ)神社の神主・松田家の屋敷「松田館(やかた)」で6日夜に県宝の「主屋(おもや)」など5棟を全焼した火災を受け、文化財を守る危機管理態勢の充実を求める声が関係者から上がっている。貴重な史料などの回収や修復には相当数の人手が必要で、作業空間の確保も容易でないためだ。県立歴史館(千曲市)の笹本正治館長は8日、史料が被災した場合に素早く運び出し、修復、保存する「救出態勢」づくりの必要性を訴えた。

 千曲市教委歴史文化財センターは同日、火災で一部が焼けたり、すすや水をかぶったりした松田家の古い写真や手紙を1枚ずつキッチンペーパーで挟み、プラスチック製の籠に並べて乾燥させる作業に追われた。所蔵していた書籍を中心に、回収した史料は段ボールなど70箱分に及び、修復には相当の期間がかかる見込みだ。松田館は他に、和歌などを記した室町時代の文学史料や戦国武将の文書も保管しているが、これらは収蔵庫にあり被災を免れた。

 笹本館長は「地震や水害で広い地域が被災すれば、市町村レベルで文化財に対応するのは難しい」とし、県などが中心となり、あらかじめ史料を救出する手順や態勢をつくっておく必要があるとする。史料を洗浄などする広い空間を確保し、学芸員やボランティアを組織化して派遣する仕組みを提案。「不幸な火災を教訓に、いかに良い方向にもっていくかが次の時代に対する責任」とした。

 火災は6日午後6時40分ごろに発生。県宝の主屋と「斎館」、いずれも市有形文化財の「味噌(みそ)蔵」「料理の間」「新座敷」を全焼した。出火当時、煙を吸って病院に搬送された近くの男性が、蜂の巣を薫蒸する器具を使っており、殺虫スプレーのガスが引火した可能性が千曲署の調べで浮上している。

 今回の火災を受け、県宝の防火について所有者らから不安の声も出始めた。県宝は国宝に比べて防火対策の基準が曖昧なためで、今後の課題となりそうだ。

 文化庁によると、国宝に指定された建物は消防法に基づき、自動火災報知設備と消火器の設置が義務付けられている。建物の用途や面積によって消火栓などを設ける施設の基準がある。建物への防災設備の導入には、国が事業費の約半分を補助する。

 一方、県宝は防災設備を導入する際、事業費の3割余を基本とする補助金があるが、導入する設備の具体的な基準はない。県教委文化財・生涯学習課によると、「どこまで防火や防犯にコストをかけるかは所有者次第」なのが現状だ。

 県宝「矢彦神社」(上伊那郡辰野町)では年1回、消防署の指導を受けて消火栓の位置を確認するなどしているが、スプリンクラーは設置していない。長野市松代町の重要文化財「旧横田家住宅」などを管理する市教委文化財課は、文化財の建造物は手を加えないことが基本とし、担当者は「スプリンクラーなどでの防火対策は難しい」としている。

(9月9日)

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