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地方大支援策 学生が集うとは思えぬ

 高等教育の将来を考え抜いた上での発案とは思えない。

 政府が、人口の東京一極集中を緩和するため、大学生の地方分散を促す新法案を来年の通常国会に提出する。

 東京23区にある大学の定員増加を抑える規定や、地方大学の産官学連携を支援する120億円規模の交付金創設を盛るという。

 大学の定員規制を強化したところで、地方定住につながるのか。国が誘導する新交付金の効果にも疑問符が付く。

 都内の大学を標的にしたのは全国知事会だった。地方創生の成果は乏しく、東京圏への人口集中が止まらない。転入者の大半は若者だ―。昨年11月に緊急決議を採択し、23区での大学・学部の新増設を抑制する立法措置を求めた。

 政府は早速、この要求を人口減少対策の総合戦略に取り入れた。詳細を練る有識者会議は今年5月、23区の大学の定員増を認めないとする中間報告をまとめ、地方大学への財政支援も提言した。

 新たな交付金は1件10億円を想定。地域の人材育成と産業発展に貢献し、雇用の創出につながる事業を補助する。政府はバイオ医薬品、介護ロボットの研究開発などを期待しており、国の有識者委員会が選定する。

 各大学の取り組みを国の基準でえり分けるのでは、創意工夫の妨げになりかねない。

 家庭の経済事情で進学を断念したり、大学生活でアルバイトを掛け持ちしたりしている若者が大勢いる。120億円もの財源があるのなら、返済不要の奨学金の枠を増やすべきだ。

 都内への学生の集中ぶりは際立っている。文部科学省の調査では全国の学生の4分の1に当たる75万人が都内の大学に通う。定員割れしている地方大学は多い。

 18歳人口は2018年から大きな減少局面に入るとされる。都市でも地方でも、大学の淘汰(とうた)は避けられないだろう。

 例えば、複数の県で一つの公立大学を運営する。地場産業や伝統工芸など特長を生かした学習機会を提供する。都市圏の大学と単位交換の仕組みを設け学生に一定期間、地方で学んでもらう。そうした工夫を地方側に求めたい。

 少子高齢社会で若い人たちが希望を持って生きられるよう、多様な志向に応え得る高等教育の環境整備に向けた議論こそ求められる。若い世代を人口のパイと捉え、奪い合うかのような議論に終始する知事会も、呼応する政府も、視野が狭すぎないか。

(9月12日)

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