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陸上競技の華、男子100メートルの「10秒の壁」が破られたのは1968年、メキシコ五輪前の全米選手権だった。3人のアフリカ系選手が手動計時であっさり9秒9。このうち準決勝1組トップのジム・ハインズが史上初の栄誉に輝いた

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当時はストップウオッチと電動計時が混在し、手動が少し有利になった。ハインズはメキシコ五輪の電動計時でも9秒95を出し、実力を証明した。それから49年、日本人には厚すぎるように見えた壁の突破である。桐生祥秀選手の9秒98には心底驚いた

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身長176センチ。アフリカ系選手との体格差は歴然で、肝心の歩幅はとてもかなわない。それを天性の速い回転でカバーできるのが強みだ。高校3年で10秒01を出して一躍、時の人になったものの、大事な大会になると失速し長く足踏み状態が続いた。今度が大学最後の舞台だった

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元陸上選手の為末大さんは、アフリカ系のバネがあったらと何度も思っては無い物ねだりを反省したという。持って生まれた体を最大限生かそうと微妙な違いにこだわる職人気質でトレーニングを工夫。それがハードルの世界選手権「銅」につながった

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練習で紆余(うよ)曲折があった桐生選手も、去年から筋力を鍛え直し、スタートを改良した。ライバルとの切磋琢磨(せっさたくま)で精神面も強くなったという。的確な分析やトレーニングの進歩によって引き続き日本人選手が「10秒の壁」を破る日は近いのではないか。3年後の東京五輪決勝が楽しみになる。

(9月12日)

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