長野県のニュース

福島 地域再建厳しい現状 松本地方などの市民が訪問

津波で家々が流され、原発事故に伴う避難を余儀なくされた福島県浪江町の請戸地区を高台から視察する参加者=10日津波で家々が流され、原発事故に伴う避難を余儀なくされた福島県浪江町の請戸地区を高台から視察する参加者=10日
 松本地方などの市民21人が10日までの2日間、東日本大震災と東京電力福島第1原発事故から6年半となる被災地の現状を知ろうと福島県を訪ねた。県内の有志でつくる「信州自遊塾」(松本猛塾長)が企画。浪江町、飯舘村、相馬市など6市町村を回り、今も住民生活や地域コミュニティーの再建が進まない実情を地元住民から聞いた。

 「爆弾が落ちたみたい。がれきだらけで悲惨だった」。福島第1原発から約6キロ離れた沿岸部の浪江町請戸(うけど)地区を見渡す高台で、地元漁師の高野武さん(67)は地震と津波に襲われた直後の様子を振り返った。当時水没した地区全体は今、草地になっている。

 直後に起きた原発事故のため、町民は全国各地に逃れた。今年3月末に町面積の約2割の避難指示が解除されたが、住民の帰還は進まず、町中心部の商店街は、壊れたまま手付かずの店舗が並ぶ。町商工会長の原田雄一さん(68)は、経営する時計店が被災。「原発事故で住民は地域を追い出された。コミュニティーを壊された」と憤った。

 原発事故で全村避難した飯舘村も訪問。菅野典雄村長は、当時の村民約6千人のうち避難指示解除後に戻ったのは約400人にとどまるとし、「(将来的に戻る人が増えても)1500人がいいところ」と見通した。

 一方で各地の除染作業は進み、農業などの産業を立て直そうとする動きも。福島県は県産米の安全性を示すため全袋検査を実施している。検査の一部を担う相馬市のNPO法人野馬土(のまど)の三浦広志代表理事(57)は「福島の農業者が自信を持って再生していくための検査」と説明。同県内で約150ヘクタールの水田を再生する計画もあり、「これからが本当の復興だ」と強調した。

 今回の企画に参加した松本市の元高校教諭宮脇利政さん(62)は「行き場がない人もおり、やるせない。自分にできることは限られるが、関心を持ち続けたい」と話した。

 信州自遊塾は、東日本大震災以降の生き方を考えようと2011年に設立。多様なテーマの講座企画などをしている。

(9月12日)

長野県のニュース(9月12日)