長野県のニュース

人づくり革命 看板ばかり増やしても

 安倍晋三首相が掲げる「人づくり革命」の具体化に向け、政府が議論を始めた。

 スローガン先行の印象が強い。新たな看板が1枚加わるだけに終わらないか、注視したい。

 閣僚や有識者が参加する「人生100年時代構想会議」の初会合を官邸で開いた。首相は「人づくり革命は政権最大のテーマだ」とアピールしている。教育無償化などについて話し合い、年末に中間報告、来年半ばをめどに基本構想を定めるという。

 6月の通常国会閉会を受けた記者会見で唐突に打ち出したものである。加計学園の獣医学部や「共謀罪」法を巡って内閣支持率が急落していた。国民の視線をそらしたかったのではないか。

 それにしても大仰なネーミングだ。先月初旬の内閣改造で看板政策に位置付け、経済再生担当相と兼務する形で茂木敏充氏を担当相に就けていた。

 茂木氏は就任会見で教育無償化や、社会人が学び直す「リカレント教育」、新卒一括採用に頼らない多様な企業採用と高齢者雇用など、5項目を中心に当面議論する考えを示した。それぞれ重要な課題だ。政府が本気で取り組もうというのなら異論はない。

 残念ながら、これまでの経緯を考えると、手放しで歓迎することはできない。むしろ、掛け声倒れに終わったり、借金がますます膨らんだりする心配が大きい。

 教育無償化一つ取っても具体化は容易でない。経済的な理由で学ぶことを諦めずに済むよう環境を整えることは大事にしても、誰を対象にどう支援するのか。必要な財源はどれほどで、どのように確保するのか。詰めなくてはならない点がたくさんある。

 首相は第2次政権発足以降、地方創生、女性活躍、1億総活躍など、新たなスローガンを次々に打ち出してきた。成果が見えないまま、目玉政策が乱立している。それぞれ置かれた担当相の役割分担もはっきりしない。

 各省庁にとっては予算要求の格好の材料でもある。政権の重点施策を対象に4兆円程度の特別枠を設けるのが恒例になっている。2018年度予算の概算要求は「人づくり革命」などで3兆8千億円の要求があった。

 来年12月には衆院議員が任期満了になる。新たな看板は解散、総選挙をにらんだ政権浮揚の手段にも見える。過去の目玉政策をうやむやにしたまま進めるわけにはいかない。成果、課題を検証して国民に説明するのが筋である。

(9月13日)

最近の社説