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憲法の岐路 自民の論議 隔たりの大きさが改めて

 安倍晋三首相が提案した憲法9条への自衛隊明記を巡り、自民党内では依然、賛否両論が出ている。

 意見の違いを埋めることができるのか、党内論議の在り方が問われる。スケジュールありきで慌ただしく進めるべきではない。

 党憲法改正推進本部の全体会合が約1カ月ぶりに開かれた。党所属の全国会議員が参加できる会合だ。8月の内閣改造・党役員人事後、初めてだった。9条、緊急事態条項、参院選「合区」解消、教育無償化―の項目ごとの意見交換が2巡目に入っている。

 首相は5月、戦争放棄を定めた9条1項と戦力不保持などの2項には手を付けず、自衛隊を書き加える案を示した。一方、2012年の党改憲草案は2項の戦力不保持などを削除し、国防軍の保持を新たに盛り込んでいる。二つの案の隔たりは大きい。

 会合では首相の案を支持する声が多かったものの、草案を尊重すべきだとの意見もあった。これまでも聞かれた議論である。党の案を取りまとめるのが簡単ではないことを改めて印象付ける。

 首相が示した案は今までに党内で議論されたことがない。異論が出るのは当然である。提案後、最初の全体会合では「時間の制約を設けずに議論する必要がある」との声も上がっていた。

 にもかかわらず、党として時間をかけて論議を深める考えはないようだ。保岡興治本部長は「具体的なイメージを示さないと議論が先に進まない」とし、9条についての3巡目の会合で条文案のたたき台を示す意向を示した。

 首相は先月、内閣改造後の記者会見で「スケジュールありきではない」と述べていた。二階俊博幹事長も「急いでゴールを見いだすのではなく、慎重の上にも慎重に国民の意見を承る」とした。神妙さは口先だけだったのか。

 そもそもの疑問が置き去りにされている。政府が「合憲」としている自衛隊をあえて書き込む必要があるのか。書き込んだときに9条の縛りは効くのか。慎重に議論するというのなら、明記することの是非から始めるべきだ。

 熟議を欠いたまま、首相の意向に沿って進んでいく心配が消えない。会合では、二つの案を併記して公明党との協議に臨んではどうかとの意見も出た。20年施行に向け、強引に案をまとめるようでは政権与党として無責任である。

(9月14日)

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