長野県のニュース

東電の適格性 判断の根拠が薄すぎる

 原子力規制委員会は国民が納得すると考えているのだろうか。

 東京電力が柏崎刈羽原発6、7号機(新潟県)を再稼働する適格性について、田中俊一委員長が記者会見で「委員会として『ある』と判断した」と述べた。

 東電が表明した安全確保に取り組む姿勢などを保安規定に明記する。違反すれば運転停止を求めることができるため、実効性があるとしている。東電が受け入れれば、事実上の合格証となる審査書案の取りまとめを進める。

 「決意と覚悟」だけで適格性があると判断できるのか。努力目標を規定に盛り込んでも違反の認定ができるのか。規制委の判断は根拠が薄すぎる。

 福島事故は、住民や国土、後世に甚大な影響をもたらした。それなのに事故の原因は解明されたとは言い難い。責任もあいまいだ。

 国会の事故調査委員会は5年前、安全規制が骨抜きにされる中で起きた「人災」と分析した。政府の調査・検証委員会は事故後の運転員のミスによる事態悪化を重視した。大きな隔たりがある。

 事故避難者が起こした集団訴訟では、前橋地裁が今年3月、「巨大津波の予見は可能で、事故は防げた」として東電と国の過失を認め、賠償を命じている。原因をさらに究明し、ソフト面を含めた再発防止策が十分なのか確認できなければ、再稼働は認めてはならないはずだ。

 明らかなのは、東電の安全意識に対する疑念だ。柏崎刈羽の審査でも体質が改善されていないことが浮き彫りになった。事故時の拠点となる免震重要棟の耐震性不足を2014年に把握したのに、今年2月まで報告しなかった。

 東電が今回規制委に提出した文書も具体性のない決意表明にすぎない。規制委の議論は拙速だ。

 再稼働に向けて同意が必要になる新潟県の米山隆一知事は、慎重な姿勢を崩していない。規制委が合格証を出しても再稼働は困難だ。東電の改革が本当に進むのか見極める時間は十分にある。結論を急いではならない。

 規制委は今回、東電に適格性があるかを判断するため、田中委員長が現場担当者を聴取する異例の対応を取った。7月には東電経営者を呼んで追及している。

 これまで規制委は原発の事故対策が新規制基準に適合しているかのみを判断してきた。今回の審査で事業者の適格性も判断基準としたのはいいとしても、判断の根拠について説得力が薄いのでは、国民の理解は得られない。

(9月15日)

最近の社説