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古代ギリシャの哲学者アリストテレスは「痛覚」を「魂の苦悩」と考えたそうだ。伊藤誠二著「痛覚のふしぎ」で知った。人類を苦しめてきた慢性の痛みは近年、脳科学などで仕組みが解明されつつある。それでも原因不明の病は多い

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線維筋痛症はその代表だろう。全身の筋肉や関節に痛みやこわばりが出る。重症化すれば軽い刺激で激痛が走って「服を着ているのも苦痛」と訴える人もいるという。死に至る病ではないが、不眠になりストレスがたまって痛みが増幅されるからつらい

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中高年の女性に多く発症する。厚労省研究班は2011年の疫学調査を基に患者数を212万人と推計した。米国でも悩む女性は多い。人気歌手レディー・ガガさんが線維筋痛症に苦しんでいると明かし、記者会見で涙ながらに闘病のつらさを語った。歌手活動も休止するという

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ガガさんはツイッターで「病気への理解を広め、苦しんでいる人同士をつなげたい」とつぶやいた。検査を受けても血液や画像で異常は見つからない。周りは「痛がりやだね」と言うだけで理解してくれない。そんな「疎外感」の中にいるのではないか

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難治性の疼(とう)痛に苦しみ病院を転々とする。そうした「痛み難民」が漂う現実がある。痛みは人生に降り積もった心の痛みとも複雑に絡み合う。臓器別などの縦割りではなく患者を丸ごと診て対話しながら診察する体制が広がらないか。解きほぐしつつ魂も癒やす痛み治療の二人三脚である。

(9月15日)

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