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兵庫県香美町の小代区は「弁当忘れても傘忘れるな」といわれるほど雨の多い地域だ。山は水を豊富に蓄え、薬草も茂った。黒毛和牛の但馬牛はそうした草を食べて育った。険しい山にある放牧場までの毎日の行き来は体を丈夫にした

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田尻号が小代で生まれたのは1939(昭和14)年。飼い主は運動と手入れを欠かさず、遺伝的な能力にも優れていた。すぐに種雄牛となり、病気もせず通常の2倍の15年間も活躍した。現在の黒毛和牛の繁殖雌牛は、99・9%が田尻号の子孫とされる

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黒毛和牛の魅力は何といっても「霜降り」だ。筋肉の間に網状に入った細かな脂身が、口の中でとろけるような独特の食感を生み出す。海外でも人気を集めて輸出も伸びており、昨年は2割程度増えている。小代の豊かな自然を由来とし、先人たちが努力を重ねてきた結果だろう

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そんな人気にも異変が起きている。霜降りが高級化する一方、赤身のおいしさに目を向ける人が増えた。5年に一度の全国和牛能力共進会は、仙台市で先日開かれた第11回大会で肉質の審査基準を変更した。霜降りの量だけでなく質のウエートを高めた

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霜降りはこれまで量が多いほど高価格で販売できた。生産者は霜降りを増やすため餌などを工夫。その結果、ビタミン欠乏症で盲目になる牛もいる。和牛五輪といわれる共進会の新たな審査基準は、生産方法の変更も迫るだろう。健康な牛ほどおいしいと思う素人考えも大切にしてほしい。

(9月19日)

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