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消費税の使途 変更は将来に禍根残す

 またしても借金返済を先送りするのか。

 消費税率を10%に引き上げて得られる増収分の使途である。安倍晋三首相が10月22日投開票を軸に調整している衆院選で、教育無償化などの財源に活用する案を打ち出す意向を固めた。

 教育無償化は首相が掲げた「人づくり革命」の柱とする政策だ。具体策を議論する有識者会議の初会合が11日に開かれた。

 重要な課題ではある。経済的な理由で学ぶことを諦めずに済む環境を整えることは、教育格差の是正にもつながる。子どもの貧困問題の改善にも役立つ。

 問題は財源だ。幼稚園・保育園の無償化だけで約7千億円、大学無償化には約3兆1千億円が必要になるという。

 だからといって、消費税増税分を当てるのは安易ではないか。

 消費税引き上げ分の使い道はすでに決まっている。2割は待機児童対策などの「社会保障の充実」に、残り8割は社会保障の財源不足を穴埋めしている借金の減額に充てる。

 使途を変更すると借金の減額がさらに遅れ、財政再建が遠のく。安倍首相は2度にわたって10%への増税を延期した。その結果、基礎的財政収支を2020年度に黒字化する政府目標の達成は極めて困難になっている。

 消費税増税分を当初の予定通りに使っても、内閣府の試算では20年度に8兆3千億円程度の赤字になる。使途変更は赤字をさらに拡大させる。財政再建は待ったなしだ。どうやって立て直すか、議論を先送りしている余裕はない。

 消費税増税で社会保障の安定財源を確保し、財政再建につなげることが、当時の民主党と自民党、公明党による12年の3党合意だったはずだ。縛られる必要はないと首相が判断しているのだとしたら、政党政治の信頼はさらに失われる。無責任極まりない。

 教育無償化の財源には「こども保険」なども候補に上がっている。企業と従業員から保険料を徴収し、子育て世帯に現金給付する仕組みが想定されている。

 まずは有識者会議や国会で誰を対象に、どう支援するのか議論して、必要な額を試算するべきだ。その上で「こども保険」などの利点と問題点を検証し、実現できるのか検討するのが筋である。消費税の使途変更も、その中で論議するべき問題だ。

 唐突に争点にしても、国民は是非を判断できない。必要な過程の省略は怠慢である。

(9月20日)

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