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福沢諭吉が西洋の道徳書を訳した「童蒙を(どうもうお)しへ草(えぐさ)」にイソップ寓話(ぐうわ)が載っている。〈羊の番する子供ありて、ある日なぐさみに同村の者を驚かさんと思ひ、「おほかみおほかみ」と呼はりて走りければ…〉。うそつきのオオカミ少年である

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この話が出てくる「信実を守る事」の章は「虚言」を事情や状況などで分類している。根拠が全てうそでなくても人を驚かすためにわざと力を入れ「巨大なる」「恐ろしき」と大げさに言い立てる。そんな言動も〈虚言偽計の一種類なり〉と記している

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わが国の首相の演説はまさか「虚言」ではあるまい。だがどうしてもオオカミ少年を連想してしまう。国連総会で北朝鮮の核とミサイルについて「脅威はかつてなく重大で眼前に差し迫ったものだ」と訴え、圧力強化を求めた。そこまで切迫しているならなぜ衆院を解散するのか

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総選挙が終わるまで1カ月の「政治空白」が生まれる。その間、不測の事態は起きないと判断しているならば国連演説を「印象操作」に利用したのではないか。総選挙に向けて北朝鮮への危機感をあおったうえで政府の強い姿勢を有権者に印象づける―

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「童蒙をしへ草」は明治5年に初編が出て小学校で広く使われた。〈人間万事信実を守りて偽を行はず虚言を言はざるは最も大切なることなり〉と教えている。加計学園や森友学園問題をめぐって虚言がまかり通っていないか。追及回避のための冒頭解散など、子どもたちに説明できまい。

(9月22日)

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