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首相国連演説 「圧力」の先が見えない

 国連総会での安倍晋三首相の演説は、大半を北朝鮮問題に割く異例のものだった。

 核・ミサイル開発を放棄させるために必要なのは圧力だとし、各国に結束を求めている。制裁を事態打開にどうつなげるか。今回の演説でも道筋は見えない。

 北朝鮮の脅威について「核兵器は水爆になったか、なろうとしている」と訴えた。

 「史上最も確信的な破壊者」によって核不拡散体制が深刻な打撃を受けようとしているとも述べている。武力行使を排除しない姿勢を示すトランプ米大統領と歩調を合わせるように、厳しい言葉で北朝鮮を非難した。

 核開発凍結などを定めた1994年の「米朝枠組み合意」や2005年の6カ国協議の合意がほごにされた経緯がある。この点に触れ「対話とは北朝鮮にとってわれわれを欺き、時間を稼ぐための最良の手段だった」と断じた。

 首相は28日召集の臨時国会冒頭に衆院を解散する考えだ。衆院選を見据えての国連演説だろう。北朝鮮問題への強い姿勢や、自身のリーダーシップを国民にアピールする狙いがうかがえる。

 「脅威はかつてなく重大で、眼前に差し迫ったもの」と指摘している。ならばなぜ今、衆院を解散して政治空白をつくるのか。北朝鮮の核・ミサイル開発を政権基盤の強化に利用しようとしていると受け取られても仕方ない。

 6回目の核実験を受け、国連安全保障理事会は石油供給の制限を柱とする制裁決議を採択した。実効性を伴うよう、各国に履行を呼び掛けるのは当然である。問題はその先だ。北朝鮮に政策を変えさせると首相は言うものの、具体策には言及していない。

 拉致問題も同様だ。「一日も早く祖国の土を踏み、父や母、家族と抱き合うことができる日が来るよう、全力を尽くしていく」とするにとどまる。対話なしにどう解決しようというのか。

 首相は、北朝鮮対応で米国の立場を支持することも改めて表明している。トランプ氏は国連演説で自国や同盟国の防衛を迫られれば北朝鮮を「完全に破壊するしか選択肢がなくなる」と警告した。激しい言葉の応酬は抜き差しならぬ状況を招きかねない。

 圧力一辺倒でなく、対話の糸口を探ることこそ日本の役割ではないか。外交の真価が問われる。首相は政府の考え方を国会で説明するのが筋だ。北朝鮮対応の点でも衆院を解散する大義は見いだせない。改めて異を唱えたい。

(9月22日)

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