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斜面

荒れ放題の山を何とかしたいが、手が出せない―。そんな思いの人は多いのではないか。かつて身内に案内された里山も手付かずのままだ。桑畑だったカラマツ林など分散する林は倒木やクズが覆い、当時も踏み込むのがためらわれた

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桑を背負って数キロの山道を下った苦労話は覚えていても、教えられた境界の目印はもう知るよしもない。その近くの学校林は代表数人の名義だったため、高校同窓会が再活用しようとしたときは、各地の子孫から同意を得るのが一大事業になったという

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蚕や炭焼きが貴重な収入源だった時代は境界や持ち主をあやふやにするなど考えられなかった。何世代も前から相続登記をしていない場合、権利者は途方もない数になる。調べても連絡がとれず、分からずじまいも多い。近年、所有者不明の山林の“迷子”は増えるばかりという

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間伐推進を掲げる県の森林税が使われず積み上がった一因だ。手入れが必要でも地主の同意が前提で、一定の面積をまとめる準備に時間がかかる。迷子があると困難を極める。法務省の抽出調査では地方で50年以上登記の変更がない山林は3割余に上る

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東日本大震災のとき特例制度ができたものの、山林を造成する高台移転事業は進まなかった。膨大な労力が所有者捜しに費やされた。このままでは山林荒廃は止まるまい。多くの人が何とかしたいと思っても、前には財産権の壁がある。森林税もここから考えねば生かす道は見えてこない。

(9月24日)

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