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首相の解散権 独断専行許さぬ縛りを

 権力維持のため―。それ以外に理由が見当たらない解散権の行使である。臨時国会の冒頭に衆院を解散する意向を、安倍晋三首相がきょう表明する。

 首相に衆院解散の自由な裁量を認めることが、民主主義に資するとは思えない。縛りをかけるため、具体的な手だてを講じるべきときにきている。

 解散権は憲法に明示されているわけではない。天皇の国事行為として7条が衆院の解散を挙げていることから、助言・承認する内閣に実質的な決定権があるという解釈に基づいて行われてきた。

 解散に関する条文はほかに、内閣不信任の場合を定めた69条がある。学説は大きく二つに分かれる。解散は69条の場合に限定されるとする説と、7条の規定や議院内閣制を根拠に内閣の裁量をより広く認める説だ。

 重要な政治課題について主権者である国民の意思を確かめる上で、69条の場合に限らず解散を許容することには意義が見いだせる。とはいえ、裁量は無限定ではない。立法府の解散という強い権限を行使するからには、国民の信を問うに足る理由が要る。

 首相は今回、民進党の新体制がつまずき、野党共闘の態勢も整わないことを念頭に解散を決断したのだろう。憲法に基づく国会召集要求を3カ月も放置した末、臨時国会で審議は全く行わない。政権・与党の都合を優先した解散権の乱用と言うほかない。

 問題なのは、にもかかわらず止めるすべがないことだ。独断専行をどう防ぐか。解散権のあり方について、政治の場で議論を前に進めなくてはならない。

 日本と同じく議院内閣制の英国では、2011年の議員任期固定法で、内閣の裁量による解散を封じた。下院の3分の2以上が賛成しないと解散はできない。大きく制度を改めた経緯や理由を確かめ、参考にしたい。

 民進党は総選挙の公約に、首相の解散権の制限を明記する方向だ。憲法の改定が必要かは慎重に見極めるべきだろう。政治的合意で対応するやり方もある。

 3月の衆院憲法審査会で首都大学東京の木村草太教授(憲法)は解散手続きを定める立法の検討を求めた。実際に解散する前に、衆院で解散理由を審議することを提案している。

 解散を「首相の専権事項」と決めてかかるのは間違いだ。解散権の不当な行使に対して主権者として厳しい目を向け、投票で意思を示すことが欠かせない。

(9月25日)

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