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ドイツ総選挙 分離映す排外勢力の台頭

 ドイツの総選挙は難民問題を巡り社会の分断が進んでいることを改めて印象づけた。

 難民に寛容な政策を進めたメルケル首相のキリスト教民主・社会同盟が第1党の座を維持したが、議席を大きく減らした。

 難民受け入れに反対の右派政党「ドイツのための選択肢(AfD)」は第3党に躍進し、初めて国政進出を果たしている。

 欧州各地でイスラム過激派のテロが相次ぎ、治安への不安が強まったことが大きい。

 単独過半数に届かなかった与党が他党とどのように連立を組むかが、今後の焦点になる。

 排外主義をあおるポピュリズムを食い止められるか。結束が揺らぐ欧州連合(EU)を引っ張っていけるか。4選を確実にしたメルケル氏の前途は多難だ。

 ユダヤ人を大量虐殺したナチス時代への反省から、ドイツでは極右思想への拒否感が強いと言われてきた。かつて極右政党が台頭した際には、既成政党が戦略的に右派色を強めて支持者を吸収。極右の伸長を止めたほどだ。

 寛容さで知られたドイツの転機となったのは、シリア内戦の激化などに伴い、欧州を目指す難民が急増したことだ。

 メルケル氏は人道主義の立場から難民を積極的に受け入れた。難民申請者による事件が相次いだことで、逆風が吹き始める。

 市民の間で募る不満の受け皿になったのが、2013年に学者や実業家らを中心に結成したAfDだ。当初は債務危機に見舞われた欧州単一通貨ユーロ圏からの離脱が主な主張だったが、途中から反難民の立場を鮮明にし、地方選で足場を築いてきた。

 党内では極右の影響力が徐々に拡大し、今回の選挙では「イスラム教の大学講座廃止」といった極端な公約も掲げた。

 AfDでは権力闘争が起きている。党を率いるペトリ氏は幅広い支持を得るために穏健路線を主張しているが、極右との対立で分裂する可能性もある。国政での影響力はまだ測れない。

 一方、保守のキリスト教民主・社会同盟と連立を組んできた中道左派の社会民主党が大幅に議席を減らしている。既存政党が求心力を低下させている点で、欧州各国と共通する。

 メルケル氏は「欧州の盟主」と呼ばれる。ドイツの政治状況は欧州の将来も左右する。連立交渉は難航しそうな気配だが、一刻も早く安定政権を築き、分断の解消に力を注いでほしい。

(9月27日)

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