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衆院選に問う 解散・総選挙へ 立法府の在り方を語れ

 衆院が解散され、各党は選挙戦に向けて走りだした。

 安倍晋三首相が有利なタイミングと踏んで打って出た解散だ。東京都の小池百合子知事による「希望の党」設立で、状況は一変している。民進党は希望への事実上の合流を決めた。

 首相「1強」の下、熟議を欠いた強引な政治が続いている。国会を「言論の府」の名にふさわしい議論の場にできるか。各党は政策とともに、政治の在り方についても考えを明確にしてもらいたい。

   野党4党の姿なく

 大島理森衆院議長が解散詔書を読み上げた本会議場にはポッカリと空席ができた。民進、共産、自由、社民の野党4党が臨時国会冒頭の解散に抗議し、欠席したためだ。極めて異例な光景が政治の現状を端的に映し出している。

 4党は6月下旬、加計学園問題の「真相解明が不十分だ」として憲法に基づき臨時国会の召集を求めた。衆参いずれかの4分の1以上の議員が要求すれば、内閣は召集を決めなければならないと定められている。

 にもかかわらず、期限の定めがないのをいいことに、首相は応じようとしなかった。ようやく開いたかと思えば、演説も質疑も行わないままの解散である。

 安全保障関連法を強行した2015年の通常国会後も野党の要求を無視した。あまりにも憲法をないがしろにしている。

 首相は、2年先の消費税増税の使い道を変えることについて信を問いたいとする。国会で議論すればいい問題である。解散ありきで取って付けた理由だ。

 4党が「森友、加計学園問題を隠す思惑がある」と反発するのはもっともである。

   「1強」のひずみ

 今度の衆院選で問わねばならないのは、こうした首相の手法、政治姿勢だ。政権を奪還した12年の衆院選から自民党は国政選挙で4連勝した。巨大与党の数の力を背景にした首相「1強」のひずみがさまざまに生じている。

 国会では、与党による法案採決の強行が当然のことのように繰り返されている。

 集団的自衛権の行使に道を開く安保法は「憲法違反」との指摘が続く中、戦後最長の会期延長で成立させた。犯罪を計画段階で処罰できる「共謀罪」法は法相の答弁もおぼつかないまま、最後は委員会採決を省く乱暴さだった。

 ともに政府から納得のいく説明はなく、疑問が残ったままだ。形ばかりの審議を時間だけ積み上げて「議論は尽くされた」と打ち切る。国会の空洞化が著しい。

 自民は首相の言いなりで、党内の異論は大きな声にならない。

 与党とはいえ、国民の代表として政府をチェックするのが本来の姿ではないか。唯々諾々と従うばかりでは責任の放棄だ。国会の役割をどう考えているのか。選挙戦で詳しく聞きたい。

 衆院選の公約には消費税の使途変更や憲法9条への自衛隊明記を盛り込む方向だ。どちらも首相が唐突に打ち出したものである。党内論議もそこそこに、慌ただしくまとめるようでは、政権党として無責任である。

 選挙になると「経済最優先」と訴えるのも首相の常とう手段である。特定秘密保護法、安保法、共謀罪など投票に影響しそうなものは正面から語らず、勝った途端に信任を得たとごり押しする。

 衆院を解散する意向を表明した25日の記者会見で首相は宿願である改憲に触れなかった。選挙を乗り切ることができたら一気に進める考えではないか。不誠実なやり方は許されない。

   対抗軸はできるか

 野党の対応は希望の登場で見通しにくくなった。

 民進は、前原誠司代表を除いて前衆院議員が基本的に離党した上で希望に参加する。

 野党候補の乱立を避けようという判断だろう。政権への批判票が分散し、共倒れになれば、与党を利するだけだ。とはいえ、党を残したままの合流は分かりにくさが否めない。「選挙互助会」との批判に応えられるのか。

 希望側は公認の対象を選別する意向を示している。細野豪志元環境相は「安保法の白紙撤回を言い続ける人は厳しい」とする。

 民進は、旧民主党時代から「違憲」と批判してきた。選挙のために容認に転じるのか、合流する議員は自らの考えをきちんと説明しなくてはならない。

 民進の合流で希望は存在感を増したものの、小池氏の人気先行で党として目指す方向はまだ明確でない。短期間で具体的な政策を取りまとめられるのか。

 民進、共産、自由、社民の4党で候補一本化を模索する構図が様変わりした。希望に合流しない民進候補の対応を含め、はっきりしない点が多い。有権者が各党、候補を見極められるよう判断材料を示すことが欠かせない。

(9月29日)

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