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子どもの権利保護で松本市が「意見表明」 条例に基づき初の措置

松本市が子どもの権利条例に基づき設置している相談室「こころの鈴」=松本市役所大手事務所松本市が子どもの権利条例に基づき設置している相談室「こころの鈴」=松本市役所大手事務所
 松本水泳協会(本部・松本市)が主催した2015年度の大会で、子どもが希望する試合に出られず精神的に苦しんだとの声が松本市に複数寄せられ、市子どもの権利擁護委員が同協会に対し、子どもの権利に配慮した大会運営を求める「意見表明」をしていたことが29日、分かった。2013年に施行された市「子どもの権利に関する条例」に基づく初めての措置。所属する団体を年度途中に変えた選手の出場制限などにより、「複数の子どもたちの心理面に与えた影響の大きさなどが懸念される」と判断した。

 県内市町村で、子どもを取り巻く問題の総合的な解決に向けた同条例があるのは松本のみ。県に同様の条例があるが、具体的な措置に至ったケースはない。子どもの権利保護について、関係者の調整が困難に陥った場合の救済の道筋を示す県内初の事例とみられる。

 信濃毎日新聞が市に情報公開請求して入手した意見書によると、15年4月以降、同協会主催の大会に関する相談が複数寄せられた。多数への影響が懸念されるとして、同擁護委員は同年8月、調査開始を決定。聞き取りなどの結果、同協会の運営には子どもの心理に影響を与えた点が見られるなどとして17年3月に意見表明した。

 関係者の話を総合すると、15年度の中信選手権で、同年度当初の登録団体から年度途中に別の団体に移った子ども1人が大会に出場できなかった。年度途中に移籍した選手の出場を認めない大会要項が妨げとなった。

 同協会は、この子どもと移籍先の団体に対し、協会主催の競技会出場への1年間出場停止を通知したため、移籍先団体らが日本スポーツ仲裁機構(東京)に仲裁を申し立てた。同機構は15年11月、出場停止の決定を取り消すよう求める判断をし、両者は和解した。出場制限については、同協会加盟の県水泳連盟(長野市)も是正を求める意見を出した。

 この大会では、選手登録を巡る見解の相違などから決勝レースに出られず、落胆する子どもが複数いた。他の大会でも出場制限を巡るトラブルがあった。現在、大会要項は見直され、大会運営についても改善されたという。

 同権利擁護委員は「選手が十分納得できない決定がなされた可能性や、複数の子どもたちの心理面に与えた影響の大きさなどが懸念される事案が存在した」と判断。同協会に、子どもに不利益になるような処分を科す場合には根拠を示し意見を言える場を設けることなどを求めた。

 同協会の増田博志会長は取材に、「意見書の内容は真摯(しんし)に受け止める」とし、「日本水泳連盟のルールにのっとった形で、子どもたちが良い成績を出せるような大会運営を第一に考えたい」と述べた。

 同擁護委員の北川和彦弁護士(諏訪市)は「子どもの権利を侵害した事実は重い」と説明。子どもの権利条例の適用については「さまざまな場面で当事者間で解決できず苦しんでいる子どもは少なくないとみられ、市条例による救済制度があることを知ってほしい」と話している。

(9月30日)

長野県のニュース(9月30日)