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持ち主不明地 情報一元化から始めよう

 土地の所有者が亡くなった後、相続登記されないまま何年も過ぎた結果持ち主が誰なのか分からない―。

 自治体を悩ませている問題に政府がようやく取り組む構えを見せ始めた。国土交通省、法務省、農林水産省がそれぞれ検討に入っている。

 団塊の世代が高齢化するこれからは、登記されないまま放置される土地がますます増える心配がある。対策は時間との戦いだ。

 所有者不明の土地が増え始めたのは、バブル崩壊で土地価格が下落したころからと推測されている。資産価値が下がった上に、登記費用や固定資産税の負担が敬遠されているとの見方だ。

 問題が注目されるきっかけは東日本大震災だった。被災地域の高台移転を計画したところ移転先に所有者不明の土地が多くあって買収できず、復興が遅れた。

 増田寛也元総務相ら民間有識者でつくる研究会の発表に驚いた人も多いだろう。全国で登記された土地の20%強、合わせると九州を上回る面積の所有者が特定できないとの推計だった。土地の種類別では、宅地の14・0%、農地の18・5%、林地の25・7%の所有者が分からないという。

 国交省が全国398市区町村を対象にしたアンケートでは、自治体による用地取得が難航する理由で多かったのは「補償内容の不満」の35%に続いて「所有者不明」の23%だった。

 国交省は今後、持ち主特定を円滑化する仕組みや土地収用制度の簡素化を検討する。法務省は相続登記の義務化、手続き簡略化、所有権放棄などについて問題点を洗い出す。農水省は所有者不明の農地を意欲ある農家に貸し出しやすくする方法を探る。

 いずれも政府が6月に閣議決定した「骨太方針」に対策促進が盛り込まれたことを受けての対応である。早ければ来年の通常国会から順次、関係する法令の改正案を出していく。

 国交省の資料には、土地所有者が死亡したとき登記の手続きを支援する窓口を設けて歓迎されている町の例が紹介されている。まずは関係する府省庁の土地情報を一元化して、ワンストップの行政サービスを提供することから始めるのが現実的ではないか。

 土地の登記は義務ではなく、所有者の権利を確かなものにするためにある。国交省が検討する土地収用の簡素化、法務省が検討する登記義務化は、憲法が保障する財産権に関係する問題だ。検討には慎重な姿勢が欠かせない。

(10月4日)

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