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千曲「松田館」火災1カ月 県宝指定継続見通せず

松田館で行われた文化財の「救出」作業。文化財の掘り出しなどが行われた=2日、千曲市八幡松田館で行われた文化財の「救出」作業。文化財の掘り出しなどが行われた=2日、千曲市八幡
 千曲市八幡の「松田館(やかた)」で県宝の「主屋(おもや)」「斎館(さいかん)」などを全焼した火災は、6日で発生から1カ月。文化財の運び出しや廃棄物の片付けはほぼ終わった。市は復元する意向で、県教委による県宝指定の継続に期待するが、現場に残る焼けた柱や壁の状態から、継続の可否は見通せない。指定のめどは、税金を投入する復元に市民の理解を得る上でも鍵となる。関係者は今後調査に入る県教委の動向を注視している。

 雨の降った2日午後、松田館では、県内各地から集まった学芸員ら60人が焼け残った文化財の「救出」作業を続けていた。現場に積もったかやぶき屋根のかやはほぼ片付けられ、器のかけらや家具の一部、布などを掘り出した。主屋は焼けた柱が所々に立ち、斎館は燃え残った壁や屋根などを木材で補強している状態だ。

 岡田昭雄市長は火災後、市議会や記者会見で、建物を復元する意向を示してきた。主屋など11棟は04年、松田家が市に寄贈しており、主屋を再建する場合、市が加入している「全国市有物件災害共済会」から約1億円の保険金が支払われる。一方、斎館は松田家が所有を続けており、保険は掛けていなかった。

 岡田市長は、主屋については「仮に県宝指定が解除されたとしても、保険の範囲内で直したい」とする。一方、斎館は文化財でなくなった場合、個人の所有物に公費をどこまで投入できるかが課題となる。現段階では「県宝として残してほしいと県教委に要望していく」との立場だ。

 県宝指定時に県文化財保護審議会の委員だった国立歴史民俗博物館の井原今朝男名誉教授(68)=長野市=によると、主屋は一般の民家にはないみそぎ用の湯殿などの特徴があり、近世の神官の住宅建築遺構という点が評価された。斎館は、幕末から明治期にかけて神道が重んじられてきたのに伴って建てられ、神事の場所が主屋の玄関から移った歴史が表れている点で貴重だという。

 県教委文化財・生涯学習課によると、県宝指定の解除は同審議会の委員や事務局が審議会に諮問し、答申を受けて県教委が行う。審議会委員らは今後、現場を本格的に調査する予定。県教委の担当者は「県宝として価値があると指定された部分がどのくらい残っているかを判断する」とし、文化財の価値の水準を保つため「厳密に審査しないといけない」とする。これまで県宝の建物が焼失した事例はないという。

 文化庁によると、国の文化財の場合は「火災で部材そのものが燃えてしまうと指定の継続は難しいケースが多い」という。

 斎館は、国選択無形民俗文化財の大頭祭(だいとうさい)の出立式などを執り行う場所。松田家代表の松田祐子さん(66)や神社の関係者らは9月25日、斎館の再建に向けて協力を求める要望書を市と市議会に出した。

 松田さんは「来年の『とんとん』(9月の仲秋祭)までには直したい。できるだけのことはするが、市にも応援してもらいたい」。氏子総代主任幹事の町田征夫さん(72)は「古式にのっとって斎館から祭りを出したいというのがみんなの思い。一刻も早い再建を願っている」と話す。

 市教委歴史文化財センターの担当者は「県の判断は1、2カ月では出ないだろう」と見通す。今以上に壊れないよう、残る建物にシートを掛ける対応などで「現状維持をする」としている。

(10月6日)

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