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かわいがっていた4歳のおいは溶けて膨れた黒い肉塊になり、小声で「お水ちょうだい」と言い続けた。亡くなることでやっと苦しみから解放された―。カナダ在住の被爆者サーロー節子さん(85)は72年前の広島の惨状を克明に語った

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3月、核兵器禁止条約の制定に向けて国連本部で開かれた会議。日本政府はその前日、条約交渉への不参加を表明していた。「被爆者は自分の国に裏切られ見捨てられた」。米国の核の傘に依存して一歩も踏み出せない母国を非難し、条約制定を訴えた

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7月、条約は122カ国の賛成で採択された。核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)の活動の大きな果実だ。サーローさんら被爆者は思い出すのもつらい体験を語り、種をまいて成長を促してきた。ICANへのノーベル平和賞は語り部の労苦をねぎらい勇気をたたえている

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核拡散防止条約(NPT)加盟の核保有五大国は条約を敵視するかのようだ。ロシアは「夢想」とはねつける。ならば問いたい。NPT体制のみで核戦争は防げるのか。枠外の国、とりわけ北朝鮮の核開発をストップできる道筋が描けているのか、と

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2005年ノーベル平和賞のエルバラダイ国際原子力機関事務局長はかつて「たばこを口にしている者が、他人に禁煙しろといっても説得力はない」と言った。世界の大勢がルールを決めて「禁煙」を迫る。むしろ現実的な道ではないか。核抑止力の中毒を終わらせる始まりになるといい。

(10月8日)

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