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衆院選に問う 核禁止条約 平和賞の意味を論戦で

 「核禁止に関する議論が大きな争点になることを期待する」

 国際非政府組織「核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)」のベアトリス・フィン事務局長はノーベル平和賞の受賞が決まった後、日本の衆院選に向けてこんなメッセージを送った。

 日本は世界で唯一の戦争被爆国である。広島、長崎の被爆者らは悲惨な体験を国内外で語り続けてきた。非人道の極みとも言える大量破壊兵器をこの世からなくすためだ。フィン氏の訴えを正面から受け止めたい。

 2007年に発足したICANは日本の被爆者と連携しながら各国で啓発活動を続けてきた。核兵器非合法化への努力は、国連で今年7月に採択された核兵器禁止条約に結実している。

 フィン氏は「(平和賞は)広島、長崎の被爆者全員にも与えられる賞」「核抑止力に頼るのは、自分も核兵器の標的になるということだ。決して国家に安全を与えない」とも述べた。

 被爆者らは米国の「核の傘」に安全保障を頼り、禁止条約に反対する日本政府の姿勢を厳しく批判してきた。「核なき世界」を本気で考える議員を国会に送り出せば、条約批准を実現できる―と考える人たちも少なくない。

 安倍晋三首相は衆院選の街頭演説で「(北朝鮮の)脅しに屈してはならない」などと訴える。

 核開発を進める政策を変えさせると力説するものの、どう実現するか、選挙戦が本格化しても説得力ある道筋は語らない。

 複数の党が公約に対話による解決を掲げた。が、論戦として深まっているとは言えない。

 なぜ、北朝鮮のような国が核兵器を持とうとするのか。核を安全保障の中心に据える米国やロシアといった大国の戦略をまねているのではないか。核保有国を含む国際社会が本腰を入れない限り、核の脅威はなくならない。

 かねて核廃絶に積極的に取り組むと訴えてきた安倍首相は今回の平和賞授与に関し、公式的なコメントを出さなかった。北朝鮮への圧力強化を訴えている手前、できなかったとしたら情けない。

 北朝鮮の核問題は、裏返せば核抑止力に頼る日本の姿勢を問うことにもなる。各党は選挙戦で核兵器禁止条約に関し、深く議論すべきだ。北朝鮮対応だけに終始するのは、被爆国としての役割を放棄しているに等しい。

(10月13日)

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