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人々を自主的に好ましい方向へ誘導する―。こんな芸当ができたら投票率低下に悩む全国の選管は飛び付くに違いない。今年のノーベル経済学賞に選ばれたのが「ナッジ」理論を提唱する米シカゴ大のリチャード・セイラー教授である

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授賞理由は心理学を経済学に取り入れたこと。利益を最大にするように合理的に行動する人を前提とした従来の経済学とは違って、人は感情的で間違いやすいという視点からの理論には親しみが持てる。ナッジは英語で「肘でやさしく相手を押す」の意

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共著で紹介するのはオランダの空港にある小便器のエピソード。飛散しにくい所にハエを描くと、無意識のうちに標的にされて掃除が楽になった。教授が提案し成功した貯蓄を増やすプランは、自動加入で解約自由、積立金は賃金につれて上がる。現状変更を嫌う心理を利用した

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変えるのを面倒と思い、やめる人は少なかった。選択の自由は尊重しつつも本人が望ましい判断をするように仕向ける。規制でも自由放任でもない緩やかな「第三の道」とセイラー教授は言う。今度の衆院選も進んで投票したくなるナッジはないものか

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投票率は前回小選挙区が52・66%と過去最低だった。常に90%超のオーストラリアのように義務化し正当な理由がなければ罰金という手もあろうが、強制には抵抗感がある。やはり基本は各党が分かりやすく政策を競うことか。肘で押すような名案が浮かべば間違いなくノーベル賞ものだ。

(10月21日)

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