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劇作家シェークスピアの作品は、名言の宝庫だ。400年以上も前に書かれたのに、洋の東西を問わず現代人の心を打つ。「この世は舞台。男も女も役者に過ぎない」。喜劇「お気に召すまま」の中に出てくる。最も有名なせりふの一つに数えられている

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こんどの総選挙にダブらせることもできそうだ。安倍晋三首相の唐突な解散、小池百合子東京都知事の国政新党立ち上げ、民進党の分裂…。シェークスピアをほうふつさせる政治劇が国民の前で繰り広げられた。背景にはそれぞれの野望が透ける

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首相が銘打った「国難突破解散」はさしずめ前口上といったところか。国難は北朝鮮の脅威と少子高齢化である。選挙戦でも力説していたけれど、胸に響かなかった。野党の態勢も不十分で、政策論議はかみ合わないまま与党大勝で選挙戦は幕を閉じた

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今回、国難という大仰な言葉に驚いた人もいたはずだ。実は初めてではない。5年前、自民党総裁選に出たときも「今は国難」と訴えた。その後の総選挙に勝ち、第2次政権を発足させたときも使っている。首相にとってはここ一番の「決めぜりふ」になっているのかもしれない

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選挙戦を振り返れば首相は改憲意欲を極力封印して無難な演技に終始した。今後、国民の信任を得たとし、改憲への動きを本格化させる可能性が高い。首相が仕掛けた劇はまだ続く。国の針路に関わる問題だ。「お気に召すまま」と、気楽な気持ちで見ていることはできない。

(10月23日)

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