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「言霊(ことだま)」とは言葉に宿っている不思議な霊威(広辞苑)。古代の日本人は言葉に出したことが、現実に起こったり人の運命を左右したりすることがあると信じていた。とりわけ儀礼の場では良くない言葉、不用意な発言を慎んだという

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政治家も「言葉は命」といわれる。軽率なひと言が政治生命を奪うことがある。この衆院選で希望の党を失速させたのは小池百合子代表が候補者選定で述べた「排除」というきついひと言だ。「言葉の選び方を反省している」と悔いても後の祭りだった

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聞き手は本心が表れる言葉に敏感だ。都議選で「こんな人たち」と発言して惨敗した安倍晋三首相は、衆院選に臨んで用心深くなっていた。それでも木で鼻をくくったような対応をした森友・加計問題で「丁寧に説明する努力をしてきた」と胸を張られると首をかしげたくなった

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与党圧勝から一夜明け、党総裁として臨んだ会見に聞き耳を立てた。慎重に言葉を選びつつ何度も口にしたのは「丁寧」と「謙虚」である。三たび安定基盤を確保した初の総裁としての自負は感じられたが、行動を伴う言霊が宿っていたかは分からない

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言霊信仰につながる風習に「忌み言葉」がある。合意形成が大事な政治の場では「強引」「乱暴」があてはまるだろう。1強の安倍政権の国会対応を象徴する言葉でもあった。改憲論議が本格化する国会で本当に「丁寧」と「謙虚」の霊力は現れるのか。首相の言葉に感度を高めなくては。

(10月24日)

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