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習体制の今後 権力集中がさらに強まる

 「中華民族の偉大な復興」を掲げ、覇権主義的姿勢を強める中国とどう向き合うか。国際社会にとって難しい問題になりそうだ。

 習近平指導部が事実上の最高意思決定機関である中国共産党大会を終え、2期目をスタートさせる。大会では習氏の名前を冠した指導思想を党の規約に新たに盛り込んだ。

 独自の社会主義路線を歩みながら、今世紀半ばまでに軍事、経済などあらゆる分野で世界をリードできる「強国」を築く、という野望である。

<1強体制が強固に>

 歴代指導者の名が付いた指導理論で、これまで規約に入っていたのは「毛沢東思想」と「〓小平理論」の二つだけだった。

 習氏は昨年、党の中で別格な存在の「核心」に自身を位置付けることに成功。今回、理論面でも建国指導者の毛沢東、改革・開放路線で経済発展の礎を築いた〓小平氏と肩を並べる歴史的な存在に高められた。1期目を終えたばかりだというのに異例のことだ。

 習氏はこの5年、「反腐敗」の名の下に政敵を排除し、権力基盤を固めてきた。人事でも後継候補の指名を見送る模様で、長期にわたる「1強体制」の維持を見据えているとみられる。

 中国ではかつて毛沢東への個人崇拝から「文化大革命」が起き、1千万人とも言われる犠牲者を出した歴史がある。その反省から主要政策は個人の専断にせず、集団で決めることにした。

 習氏の政治手法は、個人崇拝の強化も含め、毛時代への先祖返りを感じさせる。集団指導体制を形骸化させ、ブレーキが利かなくなる危険性がある。

 習氏はなぜ、ここまで1強体制の確立にこだわるのか。ヒントは党大会の初日に行った活動報告の中にある。共産党1党支配の正統性を強調しながら、ばら色に満ちた将来像を示した。

 示された行程表はこうだ。2020年に国内総生産(GDP)と国民の平均収入を10年よりも倍増させる。2050年には圧倒的な軍事力も備えた「社会主義の現代化強国」を建設する…。人民の利益が一番としながらも、実現に向けた具体策は乏しく、政治スローガンの色彩が濃い。

 中国では経済成長に伴い貧富の差が広がり、環境が悪化している。モノや情報の行き来が活発化すれば人々は窮屈さを嫌い、自由な社会を求めるようになる。

<米国主導への挑戦>

 習氏はこうした問題の解決に本腰を入れようとしなかった。党内の権力基盤を固めても、社会的に足元が安定しているわけではない。今後も市民運動や言論に対する規制を強め、愛国主義を鼓舞していくと考えられる。

 経済の先行きも不透明だ。政府主導で大手国有企業の合併を進めるなど、かねて力を入れるとしてきた市場経済化とは相いれない政策が目立つ。経済改革は停滞していると言わざるを得ない。

 対外政策も大国主義に傾く一方だ。軍事力強化のほか、海洋強国の建設加速を訴えている。昨年、国連海洋法条約に基づく仲裁裁判所が、南シナ海のほぼ全域で主権を有するとする中国の主張を否定した。なのに、これを無視して実効支配を強めている。

 国際ルールを軽んじて身勝手な行動を続ける中国を警戒している国は多い。南シナ海や東シナ海での権益確保の動きを強めていく可能性がある。日本や米国、東南アジア諸国などとの間でより緊張が高まるのではないか。

 習指導部が最終的に目指しているのは、米国から太平洋の半分の支配権を奪うことだとされる。国際協調に背を向けるトランプ政権が米国に誕生したことを、好機と考えているのではないか。米が中心になって構築してきた国際秩序に対抗し、中国主体の新たな秩序を築く野心を抱いているとみた方がよさそうだ。

 日米主導のアジア開発銀行に対抗して、アジアインフラ投資銀行を設立したり、「一帯一路」と名付けた現代版シルクロード経済圏構想を進めたりしているのもその一環とみていい。

 内政も外交も経済も、共産党による独裁の正当化や1強体制の下支えが優先されている。世界第2位の経済大国になったとはいえ、民主化への取り組みに後ろ向きなままの中国が国際社会から信頼を得られるはずはない。

<避けられぬ党改革>

 習氏は今、米国やロシア、欧州諸国などとしたたかに付き合っているが、トランプ氏の「米国第一」にも通じる危うささえ感じる。民主主義や自由の価値観と対立する場面が増えることにならないか。国内の社会矛盾拡大や、国際社会との摩擦が強まることにならないか。懸念材料は多い。

 問題の根源は、党の権力が全てに優先していることにある。国際ルールを守り、民主化を含む政治改革、党改革に本腰を入れなければ、世界をリードできる国を築けるとは思えない。

(〓は、登の右に郊のツクリ)

(10月25日)

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