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〈いくたびも野分に耐へし果樹の園〉角田幸男。信毎俳壇の期間賞にも選ばれた秀句だ。落果が心配された台風の強風にも負けず収穫にこぎつけた安堵(あんど)と喜びが伝わってくる。手塩にかけて育てた果樹である。農家の苦労もしのばれる

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台風21号が過ぎ去った昨日朝、本紙に載った写真は切なかった。下伊那郡高森町の農家の男性が落果したリンゴの「ふじ」を穴に捨てている。加工用に出荷するにしても泥を落とす作業の人手がなく廃棄せざるをえなかった。さぞ無念だったことだろう

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町産業課によると被害は50ヘクタールに及ぶ。リンゴに限れば9月の台風18号の時よりも傷痕は大きい。出原地区にある農産物直売所「旬彩館」は落果したシナノゴールドを「お値打ち価格」で販売した。ふじは熟しておらず加工用にも使えない。贈答用の入荷が確保できるか心配という

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町内でも地形などの条件によって被害が異なるようだ。ある農家は数年前から始めた「新わい化栽培」の畑の落果が少なかった。間隔を狭めて植え垣根のように組んだ支柱で支えている。樹高が低く枝も大きくあおられないため、実が落ちにくいらしい

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近年では木と木の間隔をさらに狭める植え方も導入されている。その分、風の影響を受けやすくなり、支柱ごと倒れる被害が出ている。県果樹試験場などに事例が集められ研究者らが対策を探っている。自然が相手、一筋縄ではいかないにしても〈野分に耐える〉畑が増えてほしいと願う。

(10月25日)

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