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商工中金不正 存在意義が問われる

 経済産業省が政府系金融機関の商工中金に対し、業務改善命令を出した。理由は中小企業を対象にした国の危機対応融資における不正である。

 組織の病巣は根深い。

 危機対応融資は本来、景気の急激な悪化で一般の金融機関による融資が困難と想定される場合、企業の資金繰りを支援する制度だ。商工中金や日本政策投資銀行が国の利子補給を受けて融資利率を引き下げ、資金を供給する。

 それなのに商工中金は経営が健全で本来は制度の対象にならない企業に融資をしていた。企業の経営実態を実際より悪く見せ掛けるため、多くの店舗が書類の改ざんや自作に手を染めていた。

 リーマン・ショックを機に制度が始まった2008年度から不正は始まり、4609件、融資実行額は2646億円に上る。商工中金は全体の2割超に当たる役職員800人以上を処分する。組織全体の不正といえるだろう。

 これらの融資は制度を利用しなくても、民間金融機関が融資を実行できた可能性が高い。税金を使った民業圧迫である。政府系金融機関の在り方が問われる。

 問題は不正がここまで広がった理由である。経産省は「経営陣が過度の業績プレッシャーをかけて計画値の達成を推進した」と批判している。

 商工中金は完全民営化がたびたび論議されてきた。政府が46%を出資する状態が存続したのは「経営危機が起きると民間の銀行は企業に融資しない」という理由で、存在意義が認められたためだ。

 景気が回復傾向にあって危機対応融資の需要は減少している。融資実績を維持して「中小企業の支援機関としての役割」を誇示し、今後の民営化を阻止する狙いがあった可能性は否定できない。

 商工中金には現在の安達健祐社長など経産省の次官経験者や財務省の官僚が天下っている。所管する経産省などが十分に監視できていたとは言い難い。経営陣だけでなく監督官庁の責任も厳しく追及するべきだ。

 業務や組織の抜本的な見直しも必要だ。経産省は有識者の検討会を設置し、再発防止策や危機対応融資の見直しなどを議論する。

 過去の経済危機時には、民間金融機関が中小企業に融資の返済を求めたり、融資を断ったりする事例が相次いだ。民間も問題を抱えている。中小企業を育成するため、民間と政府系の金融機関がどう連携していくのか。根本から議論していく必要がある。

(10月27日)

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