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核廃絶決議案 表現の後退に矛盾あらわ

 戦争被爆国としての責任と役割をどう考えているのか。

 日本政府が軍縮問題を扱う国連総会第1委員会に提出した核兵器廃絶決議案である。

 国連で7月に採択された核兵器禁止条約に言及せず、核兵器使用の非人道性を巡る表現が例年より大きく後退した。国際社会の失望を招いている。

 核兵器の近代化を図り、核軍縮に後ろ向きなトランプ米政権に配慮したとの見方が強い。

 安倍晋三首相は広島と長崎の式典や国連の場などで、核廃絶に積極的に取り組むと述べてきた。被爆者の願いに背くだけでなく、禁止条約の発効を求める国際的な潮流に逆行している。言行不一致のそしりは免れない。

 日本政府は1994年以来、国連に核廃絶への決意をうたった決議案を出し、23年連続で採択されている。昨年までは「核兵器のあらゆる使用」が「壊滅的な人道上の結末」をもたらすとの文言があった。今回は「あらゆる」が削除され、表現が弱まった。

 軍縮や核問題の専門家の中からは「一部の核使用は非人道的な結果を招かず、場合によっては許容されることを意味する」などと批判する声が出ている。

 後退はこれだけではない。政府が核軍縮外交の柱としてきた包括的核実験禁止条約(CTBT)の発効を促す言葉も同様だ。

 CTBTは未発効の状態になっている。昨年と一昨年の決議は米国など8カ国に早期批准を求めていたけれど、今回は北朝鮮だけに署名・批准を求めた。

 決議案に関してはトランプ政権と水面下で協議したとされる。北朝鮮の核開発問題で緊張が高まる中、米国の「核の傘」に頼る安倍政権は日米関係に亀裂が入っては困ると考えたのだろう。

 政府高官は「核保有国と非保有国の橋渡しを行うことを重視し、妥協点を追及している」とした。国連加盟国の6割超が賛同して採択された核禁止条約に日本は参加していない。橋渡し役を務めると訴えても説得力に欠ける。

 こうした姿勢のため、日本が出した決議案への理解は広がりを見せていない。むしろ核禁止条約の採択に大きな役割を果たし、ノーベル平和賞の授与が決まった国際非政府組織「核兵器廃絶国際キャンペーン」や、条約を推進した国々は批判している。

 核兵器を巡る矛盾をどう克服するか。北朝鮮問題を理由に米国に依存するだけでは核廃絶への道筋は見えてこない。

(10月28日)

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