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斜面

登山の楽しみの一つに山座同定(さんざどうてい)がある。山頂に登り着き、周りの山々の名を一つずつ特定する。「日本百名山」で知られる作家深田久弥のエッセーには、かつて登った山々の名を挙げながら「飽かず眺めた」との表現が繰り返し出てくる

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間違いなく言い当てるのはなかなか難しい。もともと、普段見慣れない山頂からの眺めだ。方角により山容が違ってもくる。名前がはっきり分かる山を基準に、それより高いか低いか、右に見えるか左か…と推理する。パズルのような面白さがある

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といった楽しみも「昔の話」になりかねないこのごろだ。今は山頂に着くやいなやスマホを取り出す人が多い。山座同定アプリによって山の並び方や山名が分かるからだ。推理が入り込む余地はない。GPS(衛星利用測位システム)のデータを取り込めば現在地を画面に表示できる

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登山者の動きを追跡するシステムの開発が進んでいる。八ケ岳連峰では実証実験が始まった。登山者の持つ発信器が3分おきに位置情報を発信、現在地をパソコンなどに表示する。うっとうしい感じもするけれど、遭難救助には役立つかもしれない

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心配が残る。端末の電池切れだ。スマホが使えなくなった途端、今いる場所が分からなくなるようでは困る。地図から情報を読み取ることを読図という。等高線の曲がり方から地形を類推し登山計画を練る。現地では眼前の景色と地図を照らし合わせる。スマホ時代にも不可欠な山の技術だ。

(10月29日)

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