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いじめ32万件 教員が向き合える余裕を

 いじめが日常化している実態を映し出す調査結果だ。教育現場に、子どもと丁寧に向き合う余裕を確保することが欠かせない。

 全国の小中高校が昨年度1年間に把握したいじめが32万件を超えた。前年度より10万件近く増えている。いじめを広く捉え、けんかやふざけ合いでも一方的な場合は対象にしたことなどが件数を押し上げた。

 文部科学省は、早期把握の方針が現場に浸透した表れとみる。注意深く子どもに目を配るようになった結果だとすれば、肯定的にも捉えられる。小さな芽の段階で適切に対処することは重要だ。

 状況が依然深刻であることに変わりはない。子どもが心身に大きな被害を受ける「重大事態」は前年度より86件増え、400件に上った。ひどいいじめを教員や学校が放置し、自殺に至った事例もある。子どもの命を守ることを何よりも優先して、取り組みを強めなければならない。

 2013年に施行されたいじめ防止対策推進法は、学校に基本方針の策定や対策組織の常設を義務づけたが、お仕着せの仕組みでは限界がある。子どもとじかに向き合う教員、学校が問題の深刻さを正面から受けとめ、主体的に動くことが全ての出発点だ。

 ただ、教育現場に今、そのための十分な態勢はあるだろうか。教員の長時間労働は常態化し、中学校では6割近く、小学校でも3割以上の教員が、過労死の労災認定基準である月80時間を上回る超過労働をしている。

 20年度から順次導入される新たな学習指導要領では、小学校で英語が教科になり、授業時間はさらに増える。教員が時間をかけて子ども一人一人と関わることは一層難しくなりそうだ。

 いじめへの対応は、教員が一人で抱え込まず、学校内で問題を共有し、スクールカウンセラーらとも連携することが大切になる。生活の困窮や親の虐待など、複雑な背景が絡む場合もある。福祉関係者や地域との協力も不可欠だ。

 教育現場が最も重視すべき課題である。対応をおろそかにしないためには、教員が疲弊している現状を変えなくてはならない。十分な教員数を確保し、過重な負担を減らす必要がある。

 全て教員や学校が介入して解決すればいいとは限らない。子どもたちの成長のため、ときには、自分たちで乗り越えられるよう時間をかけて見守ることも大事だ。その見極めも教員に時間と気持ちの余裕があってこそ可能になる。

(10月30日)

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