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石綿訴訟判決 国は抜本的な救済を図れ

 対策を遅らせ、アスベスト(石綿)による深刻な健康被害を招いた国と企業の責任は重い。積み重ねられてきた司法判断を踏まえ、抜本的な被害救済の仕組みづくりに動くべきだ。

 建設現場での被害をめぐる裁判で、東京高裁が国と建材メーカー4社に賠償を命じる判決を出した。石綿の粉じんを吸い、肺がんや中皮腫を発症した元労働者や遺族が各地で起こした集団訴訟で初の高裁判決である。

 これまでに出た一審判決7件のうち6件でも、裁判所は国が対策を怠った責任を認定している。一方、メーカーの責任を認めたのは2件にとどまっていた。

 建設労働者は現場を渡り歩いて働く上、発症までの期間は数十年と長い。どの建材が原因か特定するのは困難だ。それが企業の責任追及を妨げる壁になってきた。

 東京高裁は今回、建材の製造期間や市場占有率、労働者の作業歴などから4社の賠償責任を認定した。国とともに企業の責任にも厳しい目を向けた判断は、被害救済の道を広げる上で意義がある。

 石綿被害をめぐっては、関連工場の元従業員らが起こした裁判で2014年、国の責任を認める最高裁判決が確定した。けれども政府は、建設労働者は「別の問題」とし、置き去りにしてきた。

 行政の対応が遅れ、被害が拡大したことは、工場も建設現場も変わらない。責任の範囲を狭く捉える姿勢を政府は改めるべきだ。

 個人で仕事を請け負う「一人親方」については、裁判でも、労働者にあたらないとして国の賠償の対象外とする判断が続いている。同じように被害を受けながら理不尽と言うほかない。政府は救済の手だてを講じる責務がある。

 原告や支援団体は国と企業が出資する補償基金の創設を求めてきた。幅広い救済の方法として、政府は前向きに検討すべきだ。

 耐火性や断熱性に優れた石綿が建材などに大量に使われたのは1960年代以降。早くから発がん性が指摘されながら、原則全面禁止されたのは06年である。

 潜伏期間の長さから被害は今後さらに顕在化すると予想される。公営住宅に使われた建材で住人が中皮腫を発症した事例も明らかになっている。実態調査や医療機関との連携によって潜在患者を掘り起こすことも必要になる。

 また、建材が使われた建物の解体はこれから増える。飛散による新たな被害の防止も徹底しなければならない。石綿被害は終わっていないことを再認識したい。

(10月31日)

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