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学校・公共図書館が一体となって充実を図ろうと県図書館協会ができたのは1950年。提案者は県立図書館長の叶沢(かのうざわ)清介(せいすけ)さんである。平和国家の礎となる教育文化発展のため―と思いは熱く、長野市の発会式には300人が参加した

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大人に交じり3人の中学生が目を引いた。片道4時間かけ日帰りでやってきた旧大日向中の図書委員だった。満州に分村移民を送り出した山村の学校に本は乏しく、全校挙げての薬草採りやまき運びなどで資金を得て800冊余の「文庫」を設けていた

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当然、生徒は本を大事にし、よく読んだ。活動が評価され3人は誇らしげだったという。引率の先生は、軍隊から戻ると師範学校を繰り上げ卒業して赴任。墨塗り教科書は使い物にならず、手探りで始めたのが古本屋で探した本を読み聞かせること。これが文庫の出発点となった

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50年は叶沢さんの発案でPTA母親文庫も始まっている。図書館が貸し出し母親がグループで回し読みする仕組みだ。子どもを受け渡し役にしたことで、農村女性が読書に時間を費やすのを快く思わない、しゅうと・しゅうとめの意識も変わったという

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27日から71回目の読書週間がスタートした。国中が本に飢えた時代ははるか遠く、活字離れが叫ばれて久しい。けれど子どもらの想像力を伸ばし、他者を思いやる心、豊かな人間性を育む読書の効用は変わるまい。刺激があふれるネット時代だからこそ、根付かせたい「読書習慣」である。

(10月31日)

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