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自民改憲本部 首相主導が強まる懸念

 自民党の憲法改正推進本部長に細田博之・前総務会長の起用が決まった。安倍晋三首相の出身派閥の会長だ。

 改憲を目指す首相が自分の意向を通しやすい体制をつくったと見ることができる。首相の意を受けて、党内や対野党の議論が改憲ありきの荒っぽいものにならないか心配だ。

 これまで本部長だった保岡興治氏が衆院選を機に引退したことに伴う人事である。細田氏にこれから大事になるのは首相の言いなりにならないことだ。

 首相の5月のビデオメッセージを受けて改憲本部が打ち出した▽9条への自衛隊明記▽教育無償化▽緊急事態対応▽参院の合区解消―は機関決定を経ていない。2012年に決めた草案が今でも党の公式の改憲案である。

 12年草案には戦力不保持と交戦権否認をうたう9条2項の削除や「国防軍」保持がうたわれている。違いは大きい。4項目に党内では異論がくすぶる。

 連立を組む公明党には慎重論が根強い。9条改定は「はっきり言って難しい」と、山口那津男代表が会見で述べたこともある。

 衆院選では首相の改憲路線に反対する立憲民主党が野党第1党になった。公約には「安保法制を前提にした9条改悪に反対し徹底的に闘う」と明記してある。

 希望の党でも改憲に前向きな小池百合子代表の求心力低下に伴って、9条改定に批判的な民進党出身者が発言力を増しつつある。細田新本部長が強引に議論を進めるようだと野党との間で摩擦が強まるのは避けられない。

 心配なのは首相の姿勢である。衆院選後の会見では改憲を自民公約の柱に初めて掲げたことを強調していた。「与野党にかかわらず幅広い合意を形成するよう努力」すると述べる一方で、「政治だから全ての皆さんに理解をいただけるわけではない」としていた。最後は数の力で決める考えとも受け取れる発言だ。

 そもそも改憲を発議する権限は内閣に与えられていない。閣僚には憲法擁護義務が課せられてもいる。首相は本来、改憲に抑制的であるべきなのだ。

 保岡氏ら自民の憲法族はこれまで野党との合意を重視してきた。例えば衆参の憲法審査会では少数会派にも発言の機会を保障してきた。憲法を議論する以上当然のことだ。細田氏にはよき伝統をこれからも守ってもらいたい。

(11月3日)

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