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米国のテロ 政治利用に傾かないか

 米ニューヨークの中心地区マンハッタンでテロ事件が起きた。

 車が通行人の間に突っ込み、多くの死傷者が出ている。

 運転していたのはウズベキスタン出身の男だ。過激派組織「イスラム国」(IS)に感化されたことを示すメモなどが見つかったことから、ISを支援した疑いで訴追された。

 容疑者は7年前に移住し、米国永住権を取得。職を得て家庭も築いていた。ISは米軍などの軍事作戦で壊滅状態に陥っているが、今回の事件で影響力が衰えていないことを示した。

 穏やかに暮らしているとみられていた人物がなぜ、凶行に走ったのか。卑劣なテロの連鎖を止めるためにも、動機や背景を掘り下げなくてはならない。

 ニューヨークでは2001年に起きた米中枢同時テロ以来、最も深刻なテロとなった。米国社会を大きく揺さぶっている。

 気になるのは、波紋の広がり方だ。トランプ大統領はオバマ前大統領のテロ対策を弱腰と批判し、大統領選を制した経緯がある。就任後はテロリストの流入を阻止するとし、イスラム圏の特定国からの入国を禁止する政策の実現にこだわり続けてきた。

 この結果、国民世論は二分されて、米社会の分断を深刻化させる結果を招いている。

 トランプ氏は今回のテロ事件を受け、移民に抽選で永住権を与える制度を「できるだけ早く撤廃する」と述べた。外国人に対する入国審査の強化を指示し、反移民の立場をより鮮明にした。容疑者はこの制度を利用して入国したと強調し、制度を推進した民主党議員への批判も強めた。

 支持率の低迷から抜け出せないトランプ氏が今後、移民規制強化を求心力維持の手段にする可能性が否定できない。

 米国ではトランプ氏の排外的な政治姿勢を支持する白人至上主義者らの活動が活発化している。差別に反対する市民と衝突する事件も目立ってきた。

 米連邦捜査局(FBI)のレイ長官は議会の公聴会で、白人至上主義者らが絡むテロ関連で捜査している件数が約千件に上ると証言した。ISに触発されたテロ関係の捜査件数とほぼ同数であることが明らかになった。

 トランプ氏がテロを政治利用すれば、米社会の亀裂はより広がるだろう。憎悪犯罪を増やす恐れさえある。米国が培ってきた民主主義を空洞化させる側面があることにも目を向けたい。

(11月3日)

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