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お客を「よいしょ」しながら得意芸で酒宴を盛り上げる。太鼓持ちと呼ばれる仕事だ。落語にもよく出てくる。大抵はお調子者でひょうきん。仕える「だんな」へのご機嫌取りが度を過ぎていて笑える。多少の嫌みを感じても憎めない

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この発言は「よいしょ」だろうか。3月の参院予算委。自民党の議員が質問中に安倍晋三首相を前にこう述べた。「答弁に立たれるたびに必ずこの(背広の)ボタンをお掛けになります。質問者に対する礼儀を尽くしておられる姿…本当に見習いたい」

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議事録を読めば教育投資を中心にデータも交え熱心に質問していることが分かる。だが突っ込みが足りない印象がある。例えば財源。議員は教育国債の創設を提言した。さらに借金を増やすのか賛否両論がある。煙に巻くような首相の答弁だったが議員はそれ以上たださなかった

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野党の質問時間を削り与党分を増やすという。自民党の提案だ。衆院予算委などでは与野党に「2対8」で配分するのが慣例だった。これを議席数に応じて変更したいらしい。そうなれば与党の質問がほぼ7割を占める。翼賛議会のようになりかねない

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少数意見の尊重や政府のチェックなど議会の役割を知らないわけではあるまい。先の衆院選の大勝にまだ酔っているのか。首相自ら指示したと伝えられ「やっぱり」と納得してしまう。周りも忖度(そんたく)しているのだろうか。「よいしょ」が臆面もなくまかり通るなら悪い冗談みたいで笑えない。

(11月3日)

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