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ごみをあさり、農作物を食い散らかす厄介者といえば、街中をわが物顔で飛び回るカラスだろう。すぐ思い浮かぶ黒い羽は、よく見ると1色ではない。羽の付け根や首の部分は青みがかった黒。色彩は1羽ごとに微妙に異なってもいる

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日本では艶があって美しい黒髪を「烏(からす)の濡(ぬ)れ羽色」と呼んで、女性の髪の毛の理想にしてきた。黒髪を生み出す色素の量は人によって異なっており、黒だけでなく茶や青色を帯びた人もいる。遺伝の影響が大きく、親から受け継いだ大切な個性である

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「これはいじめ」。大阪府立の高校に通う女子生徒の主張だ。生まれつき茶色の髪を黒く染めるよう強要されたと、府を相手に訴訟を起こした。訴状だと母親が配慮を要望したが何度染めても不十分とされ指導を受けた。最後は「学校をやめるか黒染めするか」と迫られたという

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学校が面接で母親に言ったとされる言葉は耳を疑う。「たとえ金髪の外国人留学生でも規則なので黒く染めさせる」と。女子生徒は黒染めの影響で痛みやかぶれが生じ、昨年9月から不登校になった。本年度は名前が名簿になく、教室に席もないという

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府教委は頭髪指導は各校に委ねられる、としてコメントせず、府は裁判で請求棄却を求めた。個性を否定し、健康被害が出るまで指導することは教育といえまい。府教委も理解していると信じたいが、校則や学校の体面が大切なのか。異様な黒髪信仰は、カラスにとっても迷惑な話だろう。

(11月4日)

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