長野県のニュース

斜面

大きな熊手で引っかいたように、山肌に幾筋も崩れた跡が残る。熊本地震の被災地を先週訪ねた。阿蘇の玄関口にあたる南阿蘇村の立野地区は、地震と土砂崩れで甚大な被害を受けた。峡谷に架かっていた阿蘇大橋は崩れ落ちたままだ

   ◆

地震から1年半余。長期避難が先月末に解除された。集落再生へ、ようやくの第一歩だが、道のりはなお平たんではない。半壊以上の家屋が半数を超え、すぐに戻れる人は限られる。鉄道は復旧のめどすら立たない。水道も仮設で応急復旧したばかりだ

   ◆

5年前には豪雨災害に見舞われた。恐怖心から、戻るのをためらう人も少なくない。自然災害が山あいの地域にもたらす物心両面の打撃をあらためて思い知らされる。地震で被災し、今も仮住まいを続ける人は4万5千人近くに上る。最大時から2800人ほどしか減っていない

   ◆

建設業の人手不足で宅地の復旧が遅れているほか、災害公営住宅の整備が追いついていない。計画した千戸余のうちこれまでに着手したのは500戸足らず。用地が確保できないことが主な理由だという。自宅を建て直すにしても資金をどう用立てるか

   ◆

とりわけ、年金で暮らす高齢者にその壁は厚い。長く住んだ土地を離れたくないけれど、お金を借りるあても、返せるあてもない。被災地で目にする「がんばろう熊本」の張り紙。でも、何をどう頑張ればいいのか、途方に暮れている人がたくさんいる―。地元で聞いた言葉が胸に残った。

(11月6日)

最近の斜面