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FRB新議長 経済見守り慎重判断を

 米国の中央銀行に当たる連邦準備制度理事会(FRB)の次期議長にFRB理事のパウエル氏が指名された。

 パウエル氏はこれまでイエレン現議長とともに、2008年のリーマン・ショック後の米国経済再生を担ってきた。来年2月の就任後も、景気拡大に伴って徐々に金利を上げていく現在の路線が継承される可能性が大きい。

 議長候補には利上げに積極的な経済学者も挙がっていた。急激な金融引き締めは米国だけでなく、世界の経済に悪影響を与えかねない。トランプ政権は無難な選択をしたといえるだろう。

 米経済は失業率が改善し、実質経済成長率も年率3%と好調が続いている。賃金も上昇する傾向を見せており、全体として緩やかな回復傾向が続いている。

 FRBは量的緩和を14年10月に終了し、15年12月には利上げに踏み切っている。今年10月には保有資産の縮小を開始し、金融危機対応に区切りを付けた。年内にあと1回利上げし、来年は3回実施する方針を掲げる。

 一方で不安要素もある。物価がFRBの思い描くように上昇しない。目標の年率2%の物価上昇率は達成できず、1・3%にとどまっている。

 イエレン議長は「物価上昇率が目標に届かないのは謎だ」と述べている。12月に予想される利上げについても、目標を下回る状態が長期化すれば「見解を修正する用意がある」としている。

 景気動向を注意深く見守って政策を判断するFRBの姿勢が、米国経済回復の基盤になってきたといえる。とはいえ、利上げが慎重すぎると景気の過熱と資産バブルを招く恐れがある。トランプ政権の減税政策の行方もFRBの政策を大きく左右する。

 FRB内部では利上げ積極派と金融緩和派が激しく意見を交わしているとされる。政策のかじ取りは難しくなる。調整型とされるパウエル新議長の手腕が問われる。

 問題はトランプ大統領が景気の追い風となる金融緩和路線を支持していることだ。

 定員7人のFRB理事は3人が欠員だ。トランプ氏は10月には緩和路線の元財務次官を副議長に充てている。今後の理事人事次第では、政権の意向がFRBに大きな影響を与えかねない。

 中央銀行の政府からの独立は金融政策の要である。政権の過度な干渉は政策のゆがみを招く。トランプ政権とFRBは基本を忘れてはならない。

(11月8日)

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