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信大研究「オリゴ核酸」一種 敗血症重症化防ぐ働き

 信州大菌類微生物研究センター(上伊那郡南箕輪村)のセンター長、下里剛士准教授(分子生命工学)らの研究グループが9日までに、敗血症の重症化を防ぐ効果があるDNAの断片(オリゴ核酸)をマウス実験を通じて発見した。専門家によると、現在、敗血症が重症化した場合に高価な薬品が投与されているが、必ずしも死亡するリスクは抑えられていない。下里准教授は「重症化を防ぎ、かつ安価な薬品の開発につながることが期待できる」としている。

 敗血症を起こす原因の一つに、炎症や血液凝固につながる物質「血小板活性化因子」がある。実験を担当した山本祥也(よしなり)さん(27)=信大大学院博士課程3年=は、同因子を分解する酵素の生成を促す物質を探し、所属する研究室が保存していたオリゴ核酸を全て実験に使用。2015年8月ごろ、オリゴ核酸の一種「A型CpG―ODN」が効果を示すことを発見した。

 山本さんは、マウスの脾臓(ひぞう)の細胞を使って実験後、生きたマウスで効果を検証。血小板活性化因子のみを投与したマウスは20分以内に敗血症の症状で死んだが、同因子の投与前に「A型CpG―ODN」を与えたマウスは敗血症の症状が抑えられ、生存率は100%だった。

 横浜市立大大学院医学研究科の佐藤隆医師(呼吸器病学)によると、敗血症や、敗血症によるショック状態を防ぐための治療には通常、抗菌薬や血圧を上昇させる昇圧薬などを使う。重症化して血液凝固が過度に起こり多臓器障害を起こした場合は、血液凝固を抑えるタンパク質を合成した薬品が使われる。

 この薬品は、体重50キロの人が6日間投与して50万円ほどがかかり、保険を適用するのにも厳密な診断が必要。投与しても、必ずしも死亡するリスクを抑えることができないという。

 佐藤医師は、下里准教授らの研究成果について、「A型CpG―ODN」が血小板活性化因子の働きを阻害しつつ、炎症を起こす物質ができるのを抑える効果を示した―と説明。抗菌薬や昇圧薬と併用して早い段階に投与することで、多臓器障害への進行を抑えられる可能性があるとしている。

 実験で使ったオリゴ核酸は、分子構造を設計して人工的に作ったもので、佐藤医師や下里准教授によると、重症化した際に投与する薬品よりも安価で予防薬を作れる可能性があるという。

 研究グループの論文はこのほど、国際学術誌「フロンティアーズ・イン・イムノロジー」に掲載された。

(11月10日)

長野県のニュース(11月10日)