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ヘイト事前規制 表現の自由踏まえつつ

 差別や排外主義をあおる言動を許さない厳しい姿勢を、自治体として明確に示した。表現の自由に十分配慮した上で、差別と排除にどう立ち向かうか。地域、社会で議論し、取り組みを根づかせていく一歩にしたい。

 ヘイトスピーチをする団体や個人に対して、公共施設の利用を制限できることを定めたガイドライン(指針)を川崎市が策定した。事前の規制に踏み込んだ全国初の試みである。

 「不当な差別的言動の恐れが客観的事実に照らして具体的に認められる場合」に、警告のほか、条件付きの許可、あるいは不許可にできるとした。いったん許可した後に取り消すこともできる。

 在日韓国・朝鮮人らに、聞くに堪えない言葉を浴びせるヘイトスピーチは、人権と尊厳を損ね、おびえさえ抱かせる。在日の人々が多く住む川崎でも街宣や示威行動が何度も行われてきた。

 ヘイトスピーチ対策法が成立した昨年5月、川崎市は、排外的な主張を繰り返す団体の公園使用を不許可にした。その後、市の人権施策推進協議会が、表現の自由を侵害しないよう、指針や条例を設けて対応することを求める報告書を出していた。

 集会やデモによる意見表明の自由は、民主主義の土台である。公権力による介入は最大限抑制的でなければならない。とりわけ事前規制には慎重であるべきだ。

 指針が協議会の報告に沿って、その点を十分考慮したことは評価できる。表現の自由を過度に制約しないよう、利用制限は「極めて例外的な場合」に限ると明記した。不許可、許可取り消しにあたっては、事前に第三者機関の意見を聴き、判断の公平性、透明性を担保するとした。

 その上でどう実効性を持たせるか。実際に利用を制限する判断は難しさが伴うだろう。個別の事例に丁寧に対応し、前に進めていくほかない。ヘイトスピーチの根絶に向け、他の自治体の先例となる取り組みにつなげたい。

 あからさまなヘイトスピーチは一時期より減ったものの、なお沈静化してはいない。大阪市が、ヘイトスピーチと認定した団体・個人名を公表する条例を制定するなど、川崎以外でも動きは起きているが、まだ広がりを欠く。

 差別的な言動がはびこらない社会をどうつくっていくか。国や自治体が責務として取り組むとともに、市民が自ら動き、排外主義を押し返す力を地域社会で高めていくことが欠かせない。

(11月11日)

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