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米抜きTPP 情報開示し影響分析を

 形だけの大筋合意ではないのか。

 高水準の市場開放を目指す環太平洋連携協定(TPP)である。参加11カ国がベトナムで開いた閣僚会合の議長国を務めた日本とベトナムが、米国抜きの新協定の内容に「大筋合意した」と発表した。

 発効すれば、各国が日本の農水産物・食品への障壁を下げ、工業製品のほとんどの関税をなくす。米国をはじめ、世界で台頭する保護主義に対抗し得る自由貿易の経済圏になる可能性もある。

 ただし、発効に向けたハードルは高い。

 交渉では多くの懸案事項が積み残しになった。米国離脱に伴ってどの項目を凍結するかが話し合われ、最終的に20項目に上った。それでも合意できない項目が残り、独自の文化政策を取り入れる措置を求めたカナダの要求など4項目は協議を続ける。

 カナダはアジア太平洋経済協力会議(APEC)に合わせた首脳会合を土壇場でキャンセルした。最終的に各国が合意し、協定が発効できるか流動的である。

 日本にとっての問題は、乳製品の低関税輸入枠だ。米国産品の輸入増を想定していたため過大になる懸念がある。それなのに政府は是正の交渉をせず、米離脱が確定した場合に見直しを要請できる条文を付け加えただけだ。

 農林水産物などの関税撤廃・引き下げもそのままだ。日本が牛肉に課す関税の引き下げの規定も変わらない。

 政府が交渉を急いだ背景には、米国をけん制する狙いがある。

 米国は対日赤字の削減を訴え、日本市場の開放を要求する動きを強めている。今後、自由貿易協定(FTA)の交渉入りを要求してくる可能性が高い。政府はTPPが基準と主張して、要求をかわす思惑があるのだろう。

 TPPが漂流すれば対米交渉の防波堤もなくなる。政府は国内に最適な協定にすることよりも、早期合意を優先したのではないか。交渉過程に疑問が残る。

 政府は協定が国内農林業に与える影響を十分に検証し、国民に説明する義務がある。前回合意時には、同時に打ち出した対策の効果が出ることを仮定し、生産額の減少が1300億〜2100億円にとどまるとの分析結果を発表した。客観的な分析とはいえない。

 必要なのは情報をすべて開示し、痛みを明らかにすることだ。その上で対策が十分か検証するべきだ。利点のみを強調していては国民の理解を得られない。

(11月14日)

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