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パンダほど政治の重荷を背負わされた動物はいまい。1941年、中国が米国に2頭を贈った。ハワイからの航空便には真珠湾攻撃の負傷兵も乗っていたと報道された。翌年、ニューヨークの動物園で命名式典が行われ人気者になった

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中国の〓介石政権は日本の侵略を国際世論に訴え「正義の同情」を獲得することを狙っていた。初の「パンダ外交」は対外宣伝の一環だった。時代は下って1972年、共産党政権もニクソン米大統領の訪中に合わせパンダを贈り、米中和解を演出した

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家永真幸著「国宝の政治史」に詳しい。同年秋、日中国交回復を記念し2頭が日本に贈られた。上野動物園での公開を伝える本紙記事には「パンダに引かれて“万里”の列」とある。これに比べれば、2011年にやってきたリーリーとシンシンには冷ややかな視線も向けられた

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対中国感情が悪化していた。レンタル方式の第1号で中国側に払う高額な料金にも批判が出た。12年夏にはシンシンが出産したが、赤ちゃんは6日後に死んだ。それでも相性が抜群にいいという2頭である。6月に誕生した赤ちゃんはすくすく成長した

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そのシャンシャンが来月、デビューする。上野動物園生まれのパンダの一般公開は29年ぶり。折しも日中首脳が会談した。首脳の相互訪問が長らく途絶えている。パンダの愛らしい姿には誰しもほほ笑む。いつも硬い表情の両首脳が話題にすれば、座を和ませるぐらいの「政治力」はある。

(〓は草カンムリに将の旧字体)

(11月15日)

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