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条例違反発表 何を隠そうとするのか

 公権力が適正に行使されているかを確かめることは、報道の重要な役割である。県がそれを妨げようとしているなら、国民の知る権利に照らしても見過ごすことはできない。

 県の「子どもを性被害から守るための条例」による摘発事件の報道発表や対応を見直す方針を県が示した。青少年の育成・保護などの施策について調査審議する県青少年問題協議会でのことだ。報道によって子どもが受ける二次被害を予防するのが理由という。

 だが、報道で二次被害があったかどうかは「確認していない」としており、根拠は薄弱だ。

 昨年11月に全面施行された条例には、二つの処罰規定がある。18歳未満に対する威迫、欺き、困惑による性行為と、保護者の委託、同意がなく18歳未満を深夜(午後11時〜午前4時)に連れ出す行為に対してだ。

 いずれも恋愛関係であっても処罰の対象になりかねない、子どもの自由を過度に制約する、冤罪(えんざい)を生むなどの批判があった。条例は押し切って成立している。

 今年4月、深夜外出の制限違反で茨城県と群馬県の男性が書類送検された。これが初摘発となった。茨城の男性は略式起訴後に自殺している。

 もともと警察発表から得られる情報は少ない。

 茨城の男性の場合、公表されたのは郡名までの住所、職業と年齢だけ。名前は出ていない。被害者とされる女性は「南信地方の10歳代」というだけだ。

 本紙は、この男性のケースについて独自に調べてそれぞれの親に取材したルポを掲載した。

 少女が指定した深夜の時間に2回会ったことや、男性が生前「相手の嫌がることは一切していない」と話していたこと、警察から男性の自殺を知らされた少女が泣き続けたことなどが分かった。記事は少女が特定できないよう配慮している。

 浮かび上がったのは、深夜に車の中に一緒にいたというだけで摘発され、双方に悲しみをもたらした現実だ。

 条例の全面施行を前に阿部守一知事は「運用状況をしっかり検証したい」と話していた。だが、罰則適用のあり方を含めた検証は行われた形跡がなく、公表もされていない。

 それどころか、事件の発表さえ情報開示に後ろ向きの姿勢を見せる。これでは条例の懸念は払拭(ふっしょく)されない。条例が必要かどうか、改めて問わなければならない。

(11月20日)

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