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大火で焼けた新潟県糸魚川市の本町通りは加賀百万石の参勤交代も通った旧街道。雪国情緒あふれる雁木(がんぎ)造りで知られる。商家が私有地に庇(ひさし)を長くせり出し、通行人を雪から守った。風通しや採光を二の次にした豪雪地の助け合いだ

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ここで育った児童文学者の小川英子さんが思い出をブログにつづっている。雁木は雨の日も格好の遊び場だった。幼児も一緒にゴム跳び、まりつき、じゃんけん遊び…。ただし石蹴りは駄目。店の前を汚してはいけないと子どもも節度をわきまえていた

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老舗茶店の実家では必ず夕飯を多めに炊き、翌朝残った冷や飯をおかゆにする。夜中の火事の炊き出しに備えておくのが商家の習慣だった。母は「何もなくて良かった」とつぶやきながらおかゆを作り、曽祖母が亡くなるまで続けたという。何度も大火を経験した街の知恵だった

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1932年の大火では実家も被災したが、翌年、前とそっくりに再建した。小川さんは「糸魚川の町屋文化を守り伝えよう」と市民の会をつくり建物を開放、絵本の読み聞かせや休憩所などに使っている。催しがあるときは自宅のある相模原市から通う

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去年の大火は延焼を免れたものの、焼け野原と化した近所にぼうぜんとなった。市の復興計画では雁木の街並み再建も焦点だ。伝統と防災の両立が課題になる。「町屋の記憶を大事にすることで、にぎわいの再生に役立ちたい」と小川さん。“雁木・おかゆの助け合い精神”は健在である。

(11月21日)

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