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〈ばからしくて間が抜けて…日本の人全部が、こんな、冬の花火みたいなものだわ〉。太宰治の作品では冬の花火は散々な言われようである。敗戦の冬、夫の戦死を予感しつつ実家に戻った女性が、線香花火を手にして涙ながらに言う

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疎開先の津軽の生家で書いた初めての戯曲「冬の花火」だ。今夜、長野市で開く「えびす講煙火大会」は112回目。初冬の風物詩として年々人気は高まり、季節に不似合でないことを実証している。空気の澄んだ空にくっきり映える大輪の花は格別だ

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始まりは1899(明治32)年。えびす講を盛り上げようと街の有志が「煙火会」をつくった。このときの本紙には、神社に参拝客が来始めた明け方から夜まで打ち上げた―とある。花火を機に商店は一斉に大安売り。料理茶屋では朝から三味線が流れ、大にぎわいだったという

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大正時代に長野商工懇話会が主催する全市的催しになり、目玉として全国初の二尺玉(20号)打ち上げに成功した。武藤輝彦著「長野の花火は日本一」に詳しい。信州が打ち上げ花火の工場数や生産高でトップ級というのも、こうした下地があればこそ

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武藤さんによると、花火作りの名人が生まれ、これを受け継ぐ伝統が育ち、対抗するライバルも生まれて長足の進歩をもたらした。乾燥に適した気候も幸いしたという。夏の諏訪湖、清内路の秋祭り…。花火は土地ごと季節ごとに味がある。寒さに向かう時季は哀愁が感じられるのもいい。

(11月23日)

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