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先の大戦で多くのユダヤ人難民を救った元外交官杉原千畝(ちうね)氏の資料をユネスコの世界記憶遺産に―。出身地の岐阜県八百津町が手を挙げたのは2年前のことだった。大きな期待が寄せられていたが、ユネスコは先月末、登録を見送った

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杉原氏は大戦中、バルト海に面した小国リトアニアに赴任した。ナチス・ドイツの迫害から逃れるユダヤ人に日本通過を認めるビザ(査証)を発給し、約6千人を救ったといわれる。近年、この出来事を題材にした映画や舞台作品が相次いで公開された

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ユネスコは登録しなかった理由について明らかにしていない。長年にわたって顕彰や資料収集を行ってきた八百津町をはじめ、関係者の落胆は大きかった。県内にもこの判断に疑問を感じている女性がいる。リトアニア出身の藤井ユーラテさんだ

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13歳のころ授業で杉原氏の人道的な業績を教わり、日本に興味を持った。その後、縁あって長野市の男性と結婚。母国には杉原氏の名を冠した通りや記念碑などがあり、知名度は高いという。それに対し、日本では思ったよりも関心が低いことに驚いた

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来日して15年、世界は不安定化し、命が軽んじられる事件が相次ぐ。日本政府も難民には冷たく、杉原氏の人道主義と程遠い。藤井さんは29日、長野市の城山公民館で杉原氏について話す。「こんな時代だから、日本人にもっと知ってほしい」。どう話せば自分の思いが伝わるか。今、悩みながら講演の準備を進めている。

(11月24日)

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