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介護施設虐待 何が爆発させるのか

 東京の介護付き有料老人ホームに入所していた83歳の男性を殺害した疑いで、ホームの元職員が逮捕された。

 昨年には、川崎市の老人ホームでも入所者3人を投げ落として殺害した疑いで当時の職員が逮捕されている。

 なぜ続発するのか。個人の資質の問題にとどめず、背景を検証し、共有化することが必要だ。

 東京の事件で元職員は夜勤中に部屋で男性の首を絞め、湯を張った浴槽に顔をつけるなどして窒息死させた疑いが持たれている。

 男性はパーキンソン病を患い、足腰が不自由だった。調べに対し、元職員は「何度も粗相で布団などを汚され、いいかげんにしろと思ってやった」と容疑を認めているという。

 川崎の事件でも元職員は「3人とも手がかかる人だった」と供述している。入所者が粗相をし、思うように動けないのは当然で、それゆえの介護のはずだ。暴発する要因はどこにあるのか。

 介護や看護などの仕事は「感情労働」と呼ばれる。利用者らを支援する際、どんなに不快なことでも、業務上適切な感情をつくり出すことが求められる。

 介護職員の経験がある新潟医療福祉大教授の吉田輝美さんは、感情労働の技術を上げるため▽コミュニケーション能力を高める訓練プログラムを組む▽職員が傷ついた時、上司や同僚たちが精神的に支援する態勢を整える―などを挙げる。

 問題は、そうした対策を進める余裕が今の施設にあるかだ。

 介護報酬の改定で職員の月給はやや上がったが依然、全産業平均を9万円近く下回る。

 慢性的な人手不足は解消されず、職員1人にかかる負担は大きい。夜勤も頻繁に回ってくる。疲れやストレスをため込み、やりがいを失うと、思い通りにならないことへの暴言や暴力になって表れやすい―。吉田さんが指摘する悪循環だ。

 厚生労働省は高齢者虐待防止法に基づき毎年、実態調査をしている。今年発表の2015年度分で介護施設職員による虐待は408件。過去最多を更新した。これは氷山の一角だろう。

 発生要因別では「教育・知識・介護技術の問題」が最も多く、次に「ストレスや感情コントロールの問題」となっている。

 重要なのは、なぜ教育が行き届かず、ストレスを生んでいるのかを分析し、改善することだ。調査しただけでは再発防止につながらない。

(11月24日)

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