長野県のニュース

子連れで議場 責めるべきことなのか

 子どもを産み育てながら政治に参画することが難しい現状に一石を投じる行動と受け止めるべきだろう。壁になっている議会のあり方や社会の意識をどう変えていくか。議論と取り組みを広げるきっかけにしたい。

 熊本市の女性市議が、生後7カ月の長男を連れて市議会に出席しようとした問題である。抱っこして本会議場の席に着いたが、議長らと押し問答の末、断念した。

 妊娠した昨年から、赤ちゃんを連れてくることができるか議会事務局に相談していたという。前向きな回答が得られなかったため行動に踏み切ったようだ。

 市議会は、議員や職員以外が議場に入ることを禁じた規則に反するとして同伴を認めなかった。国会、地方議会を含め、議員が子ども連れで出席した事例は過去にないとみられ、とっぴな行動を取ったようにも映る。

 けれども、母親である議員が赤ちゃんと一緒に議場にいる光景は海外では既に珍しくなくなりつつある。欧州議会では、イタリアの議員が現在5歳の娘を生後数カ月のころから同伴し、すっかり顔なじみだという。

 オーストラリアでは今年、上院議員が議場で生後2カ月の娘に授乳して話題になった。連邦議会は託児施設を設けているほか、昨年の規則改正で、子どもと議場に入ることや授乳も認めた。ニュージーランドやアルゼンチンでも議場で授乳した事例があるそうだ。

 熊本市議の行動には賛否両論が出ている。手順を踏まないやり方ではかえって反感を買うといった指摘もある。ただ、女性の政治参画が遅々として進まない現実に目を向ければ、一概に非難はできない。思い切った形で意思表示をしたことも理解できる。

 女性議員に対しては、出産して休みを取ることさえ責めるような風潮もいまだにある。この7月に妊娠を公表した衆院議員は、「職務放棄だ」などとネット上で激しい批判にさらされた。

 男女の役割分業意識の根深さや、子育てとの両立を支える仕組みの乏しさが、女性を議会から遠ざけている。女性議員は衆院で全体の1割、参院でも2割ほどにとどまり、世界で最低水準だ。地方議会はさらに少なく、町村議会のおよそ3割には1人もいない。

 今回の問題提起は、熊本市議会だけに向けられているのではない。国会や各地方議会が当事者として向き合い、女性の政治参画を前進させる具体的な取り組みにつなげたい。

(11月25日)

最近の社説