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これも目移りしやすい国民性ゆえか。予算案には目が行っても終わった決算への関心はいまひとつ。適正に使われたかを調べる会計検査院が話題になることもめったにない。地味ながら創立は1880(明治13)年と古株の役所である

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財政を一手に握る参議兼大蔵卿の大隈重信が提案した。回顧談「大隈侯昔日譚」に狙いを述べている。薩長出身者が幅を利かす政府で、無駄遣いが多い薩摩閥の海軍と警視庁を改革するため。大久保利通ら実力者亡き後はばかることなく突き進んだ―と

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その人材を福沢諭吉に頼り、慶応義塾出の秀才たちを集めた。しかし翌年の政変で失脚。改革は失敗に終わり、巻き込んだ諭吉と慶応に迷惑をかけた、とも語っている。検査院の権限も大幅に縮小された。下野し「気長く将来にわたって考えねば」と起こしたのが今の早稲田大だ

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政変のきっかけは北海道開拓使が破格の安値で官有物を払い下げようとした事件である。薩摩閥の開拓長官・黒田清隆が同郷人の貿易会社に便宜を図った。新聞が暴露し、大隈も不正を追及した。今の「森友学園」の国有地売却疑惑とも重なって見える

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検査院の報告は財務省の値引き根拠が定かではなく、過大だった可能性を指摘している。「会計検査院百三十年史」によると検査は創設以来、書面が基本。財務省が「資料は破棄した」と言い張ればそれまでだ。もどかしいばかりの結論である。これを機に検査院の権限強化を図れないか。



◇「大蔵卿」、「大久保利通」の表記が誤っていました。現在は訂正済みです

(11月25日)

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