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森林環境税 屋上屋を架すのでは

 政府、与党が「森林環境税」の新設を検討している。

 手入れが行き届かなくなった森林の整備費を賄うという趣旨は、長野など37府県が独自に設けている「森林税」と同じだ。すみ分けるというが、納税者からすれば同じ住民税に上乗せされ、二重に徴収されることになる。安易な増税策ではないか。

 森林環境税は林野庁が構想し、総務省が制度設計を進めている。同省の有識者検討会は先日まとめた報告書で、地球温暖化防止や災害防止などに向け、既存の施策では限界があると指摘している。だが、その使途を見ると間伐や作業道の整備、境界画定などで、既存の森林税と変わりない。

 違う点といえば、「国民皆で森林を支える仕組み」として国税にすることと、「現場や所有者に最も近い」市町村への配分を基本とすることだ。

 課税額には触れていないが、政府は1人年間千円とする方向だ。来年度税制改正に向け、与党の税制調査会と詳細を詰めている。

 長野県の森林税(森林づくり県民税)は、国の補助事業以上に森林整備を進めるため2008年度に5年の期間で導入された。阿部守一知事がさらに5年間、継続させた。年間に個人は500円、法人は資本金などに応じて千〜4万円を徴収している。本年度末で2期目の課税期間が終わるため、県はさらに5年継続させる条例改正案を今県会に提出している。

 森林の恩恵は国民全体に及ぶ。森林県のみならず都市住民も負担すべきという考え方に異存はない。だからといって新税に結び付けるには疑問がある。国の補助制度を拡充するのが先ではないか。

 森林環境税のような特定財源は「使い切らないと損」と、無駄遣いを生みやすい。揮発油税などの道路特定財源は、不要な道路が造られ続けた元凶との批判を受け、一般財源化された過去がある。

 森林整備を市町村が担うことにも無理がないか。

 長野県の場合、民有林の23%は所有者が地元にいない。うち4%は居所がつかめなくなっている。県の森林税による間伐が進まず、集めた税金が6億円も基金に積み上がる一因だ。

 林野庁は、森林の管理を市町村が引き受け、林業経営者に貸し出す「森林バンク」をつくって財源を森林環境税で賄う方針だ。だが所有者不明の問題をどう解決するのか。市町村には専門職員が十分いないという課題もある。増税を求めるには説明が不足している。

(11月27日)

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